住宅メーカーのゼネコン進出の背景
国土交通省がまとめた2017年度(17年4月~18年3月)の新設住宅着工戸数は前年度に比べて2.8%減の94万戸で、3年ぶりの減少となった。貸家は4.0%減、持ち家は3.3%減、分譲は0.3%減だった。
新設住宅着工戸数は、1972年度の186万戸から半減したことになる。少子化が進み、今後はもっと減るとみられている。
野村総合研究所の試算によると、新設住宅着工戸数は2020年度に74万戸、25年度に66万戸、30年度に55万戸に減少する見込みだ。
新設住宅着工件数の減少を踏まえ、住宅メーカーは中・大規模建築の受注に力を入れる。20年の東京五輪に向けた再開発が加速したことで、ゼネコンが手がけていた受注額が大きい案件を戸建て住宅メーカーが施工するケースが増えた。そのため、住宅メーカーによるゼネコンの買収・提携が進んでいる。
大和ハウスは準大手ゼネコンのフジタを100%子会社にした。マンションのコスモスイニシア(旧リクルートコスモス)に63.1%出資している。
積水ハウスは準大手ゼネコン、鴻池組の親会社である鳳ホールディングスに33.3%出資。
旭化成ホームズは土木からマンション建築に比重を移した森組に30.2%出資した。
住友林業は熊谷組に20%、熊谷組は住友林業に2.85%、相互出資した。熊谷組はトンネルなど大型工事に強みがあり、大型マンション建設でも実績がある。リニア中央新幹線工事をJV(共同企業体)の幹事会社となって受注している。幹事会社としての受注は初めてだ。
ミサワホームは、関西主力でマンションなど民間建築が主体の大末建設と資本業務提携した。ミサワは大末建設の14.03%の株式を持つ。ミサワはトヨタホームが51.0%を出資する筆頭株主で、トヨタグループに組み込まれている。
住宅メーカーは少子化による住宅着工の減少に備えて、ゼネコンの守備範囲に果敢に攻め込んでいるのだ。
(文=編集部)