財務省の決裁文書改ざんとの共通点
SUBARUが国土交通省の指示に従って調査を行ったところ、重大なコンプライアンス違反が明らかになったのである。
(1)SUBARU群馬製作所の本工場および矢島工場の完成検査工程に属する燃費・排出ガスの抜き取り検査において、測定値を書き換えることによって、実際の測定結果として記載すべき数値とは異なる数値を社内書類に記載するという不正行為が行われていた。測定装置などに保存されていたデータから、少なくとも12年12月から17年11月までの期間にわたって、燃費・排出ガス測定の対象となった台数6939台のうち、測定値の不正な書き換えが行われた台数は903台に上った。
12年11月以前については、測定装置などにデータが保存されていないため、具体的なデータに基づいての確認はできなかった。しかし、従業員の供述によると、02年ごろにはすでに書き換えが行われていた可能性が高く、さらにそれ以前についても同様の行為が行われていた可能性は否定できないということだった。
(2)書き換え行為は現場の検査員および班長の判断で組織的に行われており、書き換えの手法は燃費・排出測定の職場において先輩から後輩へと受け継がれていた。上司からの指示はなく、書き換えは現場の判断によって行われていたのだが、上司は過去に燃費・排出ガス測定実務に従事していた経験者もいることから、書き換えが行われていることを認識していたとみられる。一方、課長以上の管理職および経営陣は、書き換えの事実を認識していなかったとSUBARUは結論付けている。
このSUBARUの書き換え行為は、やや飛躍するかもしれないが、現場の担当者が自分たちの都合の良いようにデータを書き換えていたという点で、森友学園事件の財務省の決算書改ざんに似ている部分がある。SUBARUの場合は、悪いデータを良くするだけでなく、良いデータを悪い測定値に書き換えるという行為もあったが、法令で定められていることを守らず、社内や現場のルールで勝手に補正を行っていたのは重大なコンプライアンス違反であることは間違いない。「現場が法令を誤って解釈して作業していました」との言い訳では片付けられない問題だ。
しかも、燃費性能はエコカー減税の対象となるので、国の補助金を搾取したと言われても反論できないものである。
独自の4WD技術や運転支援システム「アイサイト」によって、北米市場をはじめ国内販売も好調なSUBARUだが、こうした問題に真摯に取り組み襟を正してもらいたいというのがスバルユーザーの願いだろう。
(文=萩原文博/自動車ライター)