株主総会のシーズンが到来する。
株主総会は時代とともに姿を変えてきた。昔は、株主総会を穏便に終わらせるため、いわゆるシャンシャン総会にするために、総会屋がいた。総会屋にも、企業側に付いて株主総会を取り仕切る“与党総会屋”と、株主総会を混乱させるために大声を上げて質問を行ったりする“野党総会屋”が存在した。
各企業は株主総会対策のために、与党総会屋などに現金を渡したりして便宜を図った。旧第一勧業銀行(現みずほ銀行)が起こした総会屋利益供与事件は、高杉良氏の経済小説『金融腐蝕列島』(KADOKAWA)の題材となり、続編は映画化された。
警察の総会屋撲滅作戦と企業自らが総会屋との決別を進めたことで、総会屋はほぼ消滅した。
これに代わって登場したのが、“物言う株主”といわれる個人株主だった。たとえば、通商産業省(現経済産業省)を辞め、自らが投資ファンドを立ち上げて物言う株主となった村上世彰氏は、さまざまな企業に対して、株主提案のほかにも、ときには買収、ときには議決権争奪戦(プロキシーファイト)などを仕掛け、時の人となった。だが、村上氏が証券取引法のインサイダー取引容疑で起訴されると、物言う株主ブームは下火となった。
一方で、投資家サイドにも変化が現れた。政府による“貯蓄から投資へ”というキャンペーンもあり、また、企業の確定拠出年金導入が進んだこともあり、多くの資金が投資信託などに集まった。
元来、日本では企業買収の防御策という意味もあり、企業同士の株式持ち合いが行われていた。また、株式投資により資金運用を行っている機関投資家(生命保険会社、銀行、証券会社など)、投資信託の運用会社なども、株式の議決権を行使することは少なかった。
しかし、近年になって注目を浴びているのが議決権行使助言会社だ。行使されることのなかった議決権に対して、助言会社が働きかけ、さまざまな波乱が起きている。昨年の株主総会では、助言会社の助言により、新日鐵住金や野村ホールディングス、川崎汽船などで機関投資家などが株主総会議案へ反対するなど話題となった。