「助言会社が利益を得るための助言」との指摘も
議決権行使助言会社として最も有名で影響力があるといわれているのが、ISS(Institutional Shareholder Services)だ。1985年に設立された同社は、議決権行使助言業務のほかに、2002年からはコーポレート・ガバナンスの水準を点数化して評価するコーポレート・ガバナンス格付を、2006年からは企業に対するコーポレート・ガバナンスのコンサルタント事業を営んでいる。
助言会社に対して企業サイドでは、「株主の疑問に対して、企業側が説明する機会が得られる」(大手製造業)と前向きな捉え方もあるが、多くの企業では、「会社側提案に対する反対には、助言会社側の理解不足や誤解に基づくものが少なからずあり、不適切な助言といわざるを得ない」(大手サービス業)との批判が多く聞かれる。
特に、会社側提案に反対姿勢を示す際に判断材料とする情報の不正確さや、決定プロセスの不透明さ、あるいは助言内容と助言会社との利益相反、助言会社が利益を得るための助言なのではないかという疑問が、企業側からは多く聞かれる。
「議決権に対する助言を行うには、助言会社自らの情報が十分に開示され、利益相反などがないことを明らかにするべきだが、助言会社の多くは情報開示が不十分だ」(大手金融業)
かつて、格付会社による企業格付が重視され、格付によって企業の信用度が左右される事態が発生したが、その後、高い格付を付与された企業が倒産するなど、格付の不正確さにより、今ではほとんど話題にならなくなった。助言会社も“時代の継子”のような存在になる可能性は高い。
それでも、「今年の株主総会でも助言会社の助言により、いくつか紛糾しそうな株主総会があると聞いている」(株式市場関係者)という声も聞こえてくる。助言会社による“ドラマ”が注目を集める企業が、今年も出るかもしれない。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)