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永濱利廣「“バイアスを排除した”経済の見方」

今年の猛暑、家計支出を最大約7千億円押し上げる可能性…日本経済に想定外のリスクも

文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト
今年の猛暑、家計支出を最大約7千億円押し上げる可能性…日本経済に想定外のリスクもの画像1「Gettyimages」より

今夏も猛暑の見込み

 今夏も暑くなることが予想されている。気象庁が6月25日に発表した7-9月の3カ月予報によると、気温は全国的に平年より高くなる見込みとされている(資料1)。

 猛暑報道が出ると話題になるのが、猛暑が日本経済に与える影響である。猛暑になると売れるようになる商品・サービスがある一方、売れなくなる商品・サービスもある。そして、そうした効果が経済全体に与える影響は軽視できないからである。

 そこで本稿では、過去の事例を参考にしながら、今年の猛暑が経済に与える影響を予測してみよう。

今年の猛暑、家計支出を最大約7千億円押し上げる可能性…日本経済に想定外のリスクもの画像2

広範囲に及ぶ猛暑の経済的影響

 過去を振り返ると、2010年が観測史上最も暑い夏と呼ばれている。当時の気象庁の発表によると、6-8月の全国の平均気温は平年より1.64℃高くなり、1898年の統計開始以来、最高の暑さとなった。この猛暑効果で、2010年6月、7月のビール系飲料の課税数量は前年比2カ月連続プラスとなった。同様に、コンビニ売上高も麺類や飲料など夏の主力商品が好調に推移したことから、既存店前年比で7月以降2カ月連続プラスとなった。

 また、小売業界全体を見ても猛暑効果は明確に現れた。7月の小売業界の既存店売上高伸び率は猛暑の影響で季節商材の動きが活発化し、百貨店、スーパーとも盛夏商材が伸長したことで回復が進んだ。家電量販店の販売動向もエアコンが牽引し、全体として好調に推移した。

 2010年は小売業界以外にも、猛暑の恩恵が及んだ。外食産業市場の全店売上高は7月以降の前年比で2カ月連続のプラスとなり、飲料向けを中心に段ボールの販売数量も大幅に増加した。また、ドリンク剤やスキンケア商品の売上好調により、製薬関連でも猛暑が追い風となった。

 さらに、乳製品やアイスクリームが好調に推移した乳業関連も、円高進行による輸入原材料の調達コストの減少も相俟って、好調に推移した。化粧品関連でも、ボディペーパーなど好調な季節商材が目立った。一方、ガス関連は猛暑で需要が減り、医療用医薬品はお年寄りの通院が遠のいたことなどにより、猛暑がマイナスに作用したようだ。

 以上の事実を勘案すると、仮に今年の夏も猛暑となれば、幅広い業界に恩恵が及ぶ可能性がある。過去の実績によれば、猛暑で業績が左右される代表的な業界としてはエアコン関連や飲料関連、目薬や日焼け止め関連のほか、旅行や水不足関連がある(資料2)。そのほか、冷菓関連や日傘・虫除け関連といった業界も、猛暑の年には業績が好調になることが多い。

永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト

永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト

1995年早稲田大学理工学部工業経営学科卒。2005年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。1995年第一生命保険入社。98年日本経済研究センター出向。2000年4月第一生命経済研究所経済調査部。16年4月より現職。総務省消費統計研究会委員、景気循環学会理事、跡見学園女子大学非常勤講師、国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、あしぎん総合研究所客員研究員、あしかが輝き大使、佐野ふるさと特使、NPO法人ふるさとテレビ顧問。
第一生命経済研究所の公式サイトより

Twitter:@zubizac

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