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永濱利廣「“バイアスを排除した”経済の見方」

今年の猛暑、家計支出を最大約7千億円押し上げる可能性…日本経済に想定外のリスクも

文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト

 したがって、この関係を用いて今年7-9月期の日照時間が1994年および2010年と同程度となった場合の影響を試算すれば、日照時間が平年比でそれぞれ+29.4%、+21.2%増加することにより、今年7-9月期の家計消費はそれぞれ平年に比べて+6822億円(+1.2%)、+4931億円(+0.8%)程度押し上げられることになる。

 また、家計消費が増加すると、同時に輸入の増加などももたらす傾向がある(資料5)。このため、こうした影響も考慮し、最終的に猛暑が実質GDPに及ぼす影響を試算すれば、94年並みとなった場合は+4159億円(+0.3%)、2010年並みとなった場合は+3006億円(+0.2%)ほど実質GDPを押し上げることになる(資料6)。このように、やはり猛暑の影響は経済全体で見ても無視できないものといえる。

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猛暑後の「マイナス成長」ジンクス

 しかし、猛暑効果だけを見ても経済全体の正確なトレンドはわからない。猛暑の年は、夏が過ぎた後の10-12月期に反動が予想されるからだ。過去の例では、記録的猛暑となった1994年、2010 年とも7-9月期は大幅プラス成長を記録した後、翌10-12 月期は個人消費主導でマイナス成長に転じているという事実がある(資料7)。

 つまり、猛暑特需は一時的に個人消費を実力以上に押し上げるが、むしろその後の反動減を大きくする姿がうかがえる。猛暑効果により売上を伸ばす財・サービスは暑さを凌ぐためにやむなく出費するものが多い。したがって、今年も猛暑効果で夏に過剰な出費がなされれば、秋口以降は家計が節約モードに入ることが予想されるため、秋以降は注意が必要だろう。

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年を越えて影響を及ぼす猛暑効果

 このように、今後の気象次第では、足もとで緩やかな回復基調にある日本経済に思わぬ影響が及ぶ可能性も否定できない。なお、夏場の日照時間は翌春の花粉の飛散量を通じても経済に影響を及ぼす。前年夏の日照時間が増加して花粉の飛散量が増えれば、花粉症患者を中心に外出がしにくくなることから、今年の猛暑は逆に来春の個人消費を押し下げる可能性があることについても補足しておきたい。

 足もとの個人消費に関しては、猛暑も手伝って、夏場にかけて回復すると見られている。しかし、秋口以降の個人消費の動向を見通す上では、猛暑効果の反動といったリスク要因が引き続き潜んでいることには注意が必要であろう。今年度の景気を見る上でも、今後も天候の動向から目が離せない。
(文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト)

永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト

永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト

1995年早稲田大学理工学部工業経営学科卒。2005年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。1995年第一生命保険入社。98年日本経済研究センター出向。2000年4月第一生命経済研究所経済調査部。16年4月より現職。総務省消費統計研究会委員、景気循環学会理事、跡見学園女子大学非常勤講師、国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、あしぎん総合研究所客員研究員、あしかが輝き大使、佐野ふるさと特使、NPO法人ふるさとテレビ顧問。
第一生命経済研究所の公式サイトより

Twitter:@zubizac

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