三輪会長と厚労省天下りの黒川理事長の対立が原因?
背景には、厚生労働省からの天下り問題がある。
三輪氏は自派のHPで「会長挨拶」として前理事長(柴田派の理事長)である黒川達夫・元厚生労働省審議官(医薬担当)を、次のように糾弾している。
「私どもは一般薬連において、セルフメディケーションを充実させ、海外の潮流に伍する力を持った産業を育成させるという、革新的連合体として設立し、その活動を推進してまいりました。残念ながら黒川達夫氏(前理事長)はこの理念に賛同されず、また深刻な利益相反を抱えておられたことから、職務を全く果たしておられませんでした。これに乗じ、一般薬連を従来型の守旧型業界団体として支配運営したい一部の方々がおられ、さまざまな動きを見せておられます」
一般薬連のお家騒動は、三輪氏と天下りの黒川氏の対立が大元なのだ。黒川氏が厚労省のシナリオに沿って三輪氏を排除し、傘下団体の合意形成に関与していることに、三輪氏が強く反発したことが発火点となった。
各業界団体は中央省庁のキャリア官僚の天下りの指定席となっている。一般薬連も例外ではない。厚労省出身者が運営に介入してきたことから対立が火を噴き、天下りの是非にまで及んだということのようだ。
一般薬連は11年、市販薬に関連した5団体、約270社が参加して発足した。構成5団体は、日本OTC医薬品協会、日本医薬品直販メーカー協議会、日本家庭薬協会、日本漢方生薬製剤協会、一般社団法人全国配置薬協会。初代会長には大正製薬会長の上原明氏、副会長に三輪氏が選任された。
OTC(カウンター越しに販売する)医薬品を活用したセルフメディケーション(自主服薬)を推進する業界団体だ。だが、OTC医薬品を「低迷する市場の起爆剤にする」との大衆薬メーカーの期待は空回りに終わっている。
17年から始まった「セルフメディケーション税制」では、処方箋が必要な医療用医薬品の成分を市販薬に転換した「スイッチOTC」を年間1万2000円超購入すると、所得控除を受けられることになっている。しかし、スイッチOTCの知名度の低さから普及していない。解熱鎮痛剤や水虫薬、さらには胃痛や胸やけ、胃もたれなどに効能を持つ「H2ブロッカー」などがスイッチOTCの代表例だ。
スイッチOTC医薬品の普及の旗振り役であった三輪氏と、厚労省天下りの黒川氏が、その責任をめぐって対立したというのが、お家騒動の舞台裏のようだ。
(文=編集部)