債務超過のNCAに運航停止の追い打ち
日本郵船にとってNCAの運航停止は大きな誤算だった。
NCAは1978年、日本郵船など海運大手4社と全日本空輸(現ANAホールディングス)が20%ずつ出資して設立された国際貨物専門の会社だ。2005年、多角化を目指す日本郵船が子会社にした。
NCAの業績を示す日本郵船の航空運送事業は、かつて200億円の経常赤字を出したことがあるが、最近は経常黒字を確保してきた。18年3月期のNCAの売上高は978億円、経常利益は18億円の黒字。ただ、過去の損失を引きずり854億円の債務超過だ。
当初、19年3月期のNCAの売上高は前期比3%増の1010億円、経常利益は17%減の15億円と、5期連続の黒字を見込んでいた。だが、運航停止を受けてNCAの19年3月期の業績予想を大幅に下方修正した。売上高は630億円と、従来予想より380億円の減収。経常損益は160億円の赤字とした。影響は、さらに長期化する可能性が高い。
主力の海運事業は、国際的な海運市況の変動に大きく左右される。NCAが担う航空貨物の分野は、安定収益源として期待されてきた。それだけに、今回の運航停止のダメージは大きくて深い。
海運3社、コンテナ船統合費用が先行し収益悪化
海運業界はコンテナ船の供給過剰で業績が悪化している。海運大手3社は海運不況に対処するため、海外のターミナル事業を含めた定期コンテナ船事業を統合した。統合後の新会社ONEの出資比率は日本郵船が38%、川崎汽船が31%、商船三井が31%。今年4月から、3社はコンテナ船事業の運営をONEに委ねた。
3月までに運航を始めた船の貨物の積みおろしなどにかかる費用は各社が負担する取り決めになっており、この移行費用が想定よりも膨らんだ。
海運大手3社の4~6月期決算は以下のとおり。
日本郵船の経常損益は、前述のとおり66億円の赤字。商船三井は前年同期比96%減の2億5100万円の黒字。川崎汽船は170億円の経常赤字(前年同期は59億円の黒字)だった。移行費用は大半が4~6月期に発生する一過性のものだ。海運市況は改善傾向にあり、7~9月期以降の経常損益は改善する見込みだ。
(文=編集部)