「業界内でまず取り沙汰されたのは、流通大手のイオンとイトーヨーカドーを展開するセブン&アイHDの2社です。イオンは駅前に弱いので、駅前に店舗を持つ西友は魅力。イトーヨーカドーも首都圏に駅前店舗がありますが、西友に比べると密度は薄いので、やはり西友は魅力でしょう。今後、高齢者の免許の返納が増えて、車に乗らない高齢者が増える。歩いて行ける地場のスーパーやコンビニエンスストアが今すごく好調なのを忸怩たる思いで見ているはずです。
ただし、イオンは多額の借金をしていますし、大株主が日本銀行ですからね。有利子負債も相当ありますから、ここで無理して西友を買うかどうかは大きな賭けだと思います。セブン&アイHDはたぶん買わないでしょう。イトーヨーカドーの処理も終わっていないし、他を買ってさんざん痛い目にあっていますから、井阪隆一社長の性格から考えても、西友を買うことは恐らくないはずです。改装を全部やるとなると、そこまでの費用負担はできませんからね。
それ以外でいうと、ネット通販系の楽天になるでしょう。駅前にある西友の店舗を“ラスト1マイル”の配送拠点にできますからね。ただし、スーパーのノウハウを持っていない状況のなかで、都市部の一部だけのサービス展開だと二の足を踏む可能性もある。落ち着きどころとなると、やっぱり商社でしょうかね。もともとファミリーマートの親会社は西友でしたから、今度はユニー・ファミリーマートHDが西友を買い戻す。つまり、親会社の伊藤忠商事が中心になって動く可能性は、かなりあるかなと個人的には思っています」(別の業界関係者)
ドンキホーテHD、事実上の名乗り出
ユニー・ファミリーマートHDと資本業務提携するドンキホーテHDの大原社長は13日の事業説明会で、ウォルマートが傘下の西友を売却するならば「興味はある」と述べ、前向きな姿勢を示したのだ。西友売却については「マスコミで見た情報だけ」とした上で、「不動産がなければ小売業はできない。人材などに加え、当然、すべてではないが、今では手に入らないような立地が多数ある。もし、本当に売るならば、細かく精査したい」とまで述べたのだから、名乗りを上げたに等しい。
ドンキホーテHDは07年10月に長崎屋を傘下に収めて以降、スーパー運営のノウハウを蓄積。昨年は東京・渋谷に食品スーパーの機能を兼ね備えた店舗を出店して話題を呼んだ。ユニーの6店舗を転換させるかたちで始めた新業態店舗は、6店舗すべてで売上高、客数、利益が好調に推移している。2019年中にはさらに20店舗を転換する予定だ。
同社が10日に発表した19年6月期業績見通しは、連結売上高1兆円(前年比6.2%増)、営業利益530億円(同2.8%増)で、30期連続の増収増益となる見通しだ。「ビジョン2020」では20年6月期に売上高1兆円、店舗数500店舗(現在418店舗)を掲げ、大原CEOは「在任中に営業利益1000億円を達成したい」と述べた。
ディスカウントストアのドンキホーテHDが、総合スーパーの西友を買収する可能性が高まりつつあるといえるかもしれない。
(文=兜森衛)