なぜ小池都知事と徳島市の遠藤市長は自ら「死に体」になった?私が遠藤市長に好感を抱く理由
一方、遠藤市長は新町西地区第一種市街地再開発事業の訴訟に足をとられつつ、「敵は本能寺にあり」ということだろうが、阿波踊りの改革に乗り出した。阿波踊りは毎年100万人以上も集める四国でも屈指の観光行事なので、大きな経済効果がある。金が動くところに利権あり、というのが世間一般の認識だ。
阿波踊りを主催していたのが徳島新聞と徳島市観光協会だった。市が補助金を出していた市観光協会を監査したところ、累積で4億3000万円の赤字が出ていたという。遠藤市長は市観光協会をどうにかしようと考え、まず協会長の自発的な退任を求めた。ところがその時の面談会話の録音とされる音源がインターネット上にアップされてしまうというスキャンダラスな展開となってしまった。
18年2月に遠藤市長は、「今年を徳島市の行政改革元年とする」と宣言し、3月に入ると市観光協会を相手にその破産手続きを徳島地裁に申請し、決定された(観光協会は抗告)。
そして、今回の総踊り中止の決定に至る。
しかし、遠藤市長が大胆に仕掛けたこの決定は、大方で不評な結果となった。私も本連載8月14日付記事『阿波踊り、遠藤市長の間違った判断でブランド毀損…来場者激減→巨額の経済的損失か』で、「経済的損失は24億円強か」と推定した。
火中の栗を拾おうとして窮地か、どうする遠藤市長
阿波踊り期間中、そしてその後現在に至るまで、メディアでの取り上げ方をみると遠藤市長は分が悪いが、無理もない。四国だけでなく日本にとっても大きな夏の行事、国民的行事ともいえる阿波踊りに水を差した結果、そのブランドを毀損したとみることができる。私も、遠藤市長は改革の功を急いで墓穴を掘ってしまったという感を持たざるを得ない。ここ数日テレビ番組に出演する様子や、隠し撮りされたとされるテープで観光協会長を一生懸命に説得しようとする言葉から、遠藤市長は理想家なのだろうという好印象を私は持つに至っている。
しかし、この苦境、難しい政局を遠藤市長はどのように乗り切ろうとしているのだろうか。あるいは、旧来の大きな波に飲み込まれて小池知事のように光を失っていくのだろうか。
阿波踊り、そして総踊りは廃れることはないのだろう。地方都市の政治の動きとは離れて、自生していく生き物のようなお化け行事として私たち日本人の中にあるし、日本の夏から外せない風景となっているからだ。
(文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント)
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