パナソニックはいつまでテスラと付き合うのか
パナソニックは、このマスク氏の“迷走”に翻弄された。EV向け電池と太陽電池の2事業でテスラと協力関係にあるが、テスラの経営悪化で、共同設立した米国の太陽電池工場の立ち上げが停滞している。
「脱家電」を打ち出したパナソニックは、次の経営の柱に据えるべく、2013年から自動車部品や車載事業に軸足を移していた。旧三洋電機の電池技術を活用した車載電池の分野では、世界のトップクラスに上り詰めた。
その最大顧客がテスラだ。10年、パナソニックがテスラに3000万ドルを出資。14年、米ネバタ州に大規模なEV用電池工場(ギガファクトリー)を建設することで合意した。パナソニックは同工場に約2000億円を投じる計画。追加投資も視野に入れている。
両社は17年10月、米ニューヨーク州に太陽電池生産のバッファロー工場を稼働させた。だが、テスラのEV事業が失速した。17年7月から「モデル3」の量産を開始したが苦戦。電池の完全自動生産をあきらめ、24時間・週7日、工場を稼働する人海作戦に切り替えた。
だが、莫大な投資により、キャッシュが流出。企業が自由に使える純現金収支(フリーキャッシュフロー)は8期連続で赤字。18年6月末時点の現預金額は22億ドルと、3カ月で約4億ドル減った。18年4~6月期決算の最終損益は7億ドル超(約800億円)と過去最大の赤字を計上。累積赤字額は約100億ドル(1兆1000億円強)に上る。
MBO(経営陣による企業買収)による株式非公開化計画が撤回に追い込まれたことから、次の資金調達方法に市場の関心は移った。
その筆頭は、マスク氏が創業した宇宙開発企業のスペースXだ。同社の企業価値は460億ドル(約5兆円)に上る。スペースXがテスラを買収するか、マスク氏が保有するスペースX株を担保に資金を借りてテスラを買収する、というシナリオが取り沙汰されている。
マスク氏は、中国でも工場建設をもくろんでいる。パナソニックの津賀一宏社長は「テスラが中国で一貫生産するならば、電池を供給する」と、米国に次ぐ第2のギガファクトリー建設に前向きに応じる姿勢を明らかにした。
しかし、テスラの経営が混乱したことで、パナソニックは一定の距離を置かざるを得なくなった。太陽電池の部材をテスラに独占供給する契約を見直し、パナソニックは今秋にもテスラ以外への供給を始める。
一方で、「パナソニックはいつまでテスラと付き合うつもりなのか?」と、市場関係者の視線は日に日に厳しくなっている。
香港のファンドから9月中に250億円の融資を受ける
パイオニアは9月12日、香港の投資ファンド、ベアリング・プライベート・エクイティ・アジアから資金支援を受けることで基本合意したと発表した。9月18日に250億円の融資を受けるほか、ベアリング側を引受先とする500~600億円の第三者割当増資を行う。そのうち250億円は、9月下旬に返済期限を迎える借入金133億円の返済や運転資金に充当する。
10月末までに正式契約を結び、12月末までに第三者割当増資をベアリングが引き受ける段取り。第三者割当増資が完了すればベアリングが筆頭株主となって経営権を握り、事実上、傘下に収めることになる。
第三者割当増資の承認を得るため、9月30日から3カ月以内に臨時株主総会を開く。香港のファンドからの融資は「時間稼ぎにすぎない」(金融関係者)との厳しい見方が多い。
抜本的な経営再建はまだまだ先のようだ。
(文=編集部)