アナリスト説明会で、黒字化の時期について問われた山田氏は「メルカリのゴールは短期的な収益を高めることではなく、中長期的に成長すること。いつまでに黒字化できるか明言できない。国内外で積極的に投資していく」と述べるにとどめた。
19年6月期については「合理的な業績予想は困難」として、売り上げ、利益、投資額を非開示とした。上場時点では18年6月期の売り上げの見通しは公表していたが、市場(マーケット)との対話は一歩も二歩も後退したことになる。
次々にサービス開始し、「クイックに撤退」繰り返し
アプリ利用者から出展品を買い取る「メルカリNOW(ナウ)」は、8月20日にサービスを終了した。昨年11月末にサービスを開始したばかりだが、わずか9カ月で打ち止めとなった。ブランド品に特化した「メルカリメゾンズ」や、英会話レッスンや料理など個人のスキルを売り買いする「teacha(ティーチャ)」も8月中で終えた。ティーチャに至っては、今年4月に始めたばかりだ。5月に閉鎖した地域コミュニティーアプリ「メルカリアッテ」を含めると、3カ月の間に4つのサービスを休止したことになる。
小泉文明社長は「違うと思ったらクイックに撤退を判断する。経営者は有限なリソースをどこに充てたらいいかを考えるべきだ」と発言しているが、上場企業は常に株主の厳しい目があることを忘れてはならない。
メルカリは、新規事業の開発を担うソウゾウと、金融関連事業のメルペイを子会社に持つ。ソウゾウは、自転車シェアサービスなどの新事業を打ち出し、今秋には旅行関連事業に参入するが、オンライン系旅行業界には強豪がひしめく。
“ポストフリマ”の本命としているのが、スマホ決済サービスである。12月1日付で、メルカリの決済事業をメルペイに移管。年内にも決済サービスを始める。
スマホ決済には米アマゾン・ドット・コムの日本法人アマゾンジャパンが参入し、ヤフーや楽天も体制を強化。LINEもスマホ決済を次の柱に据えている。
「今後もチャンスのあるところにクイックに参入し、難しいとわかれば、クイックに撤退することを繰り返していく」
これがメルカリの経営の基本方針だが、スマホ決済は金融インフラだ。儲からないからといって、これまでのサービスのように、すぐに撤退できる分野ではない。
「中長期戦略としてメルカリのエコシステム(経済圏)を構築する」と意気込むが、メルカリ経済圏を構築するメドは、いつ立つのだろうか。
IPOで得た資金を注ぎ込んでいる米国市場で実績を残せるかも、現時点では不透明だ。10月25日に公開価格を一気に割り込んだことは、投資家がメルカリの経営の現状を、かなりシビアに見ている表れである。
(文=編集部)