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山田修「間違いだらけのビジネス戦略」

マツダ、欧州ディーゼル車から撤退すべきだ…ロータリー・エンジン過信で経営危機の二の舞

文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント

 自動車が排出する環境汚染物質は、CO2(二酸化炭素)とNOxがある。ガソリン車に比べてディーゼル・エンジンはCO2の排出量が少ないこと、燃費が良いことから特にヨーロッパ市場で受け入れられてきた。ところが2015年に独フォルクスワーゲンによるディーゼル・エンジンの排出不正問題が発覚して以降、環境規制の厳格化も相まって、世界のディーゼル市場は大きなダウン・トレンドに突入してしまった。

 問題の出所となった北米市場ではディーゼル車のマーケット・シェアはもともと大きくなかったのだが、大きな痛手を被ったのが、ガソリン車よりもディーゼル車のほうが売れていたヨーロッパ市場だった。

 ピークの11年には西欧18カ国でディーゼル車のシェアは56%を占めたが、直近18年上半期では域内でのディーゼル車の販売総数349万台(対前年同期比4.2%マイナス)に比べ、ガソリン車は365万台(対前年同期比9.9%増)となった(欧州自動車工業会発表、ただしEUとEFTA<欧州自由貿易連合>全30カ国の合計)。域内でガソリン車の売上がディーゼル車を上回ったのは、09年以来8年ぶりだそうだ。

 今年前半のヨーロッパでのガソリン車の増え方は前年比9.9%増という、ほぼ2桁である。このパラダイム・シフトとも呼べる変化は、マーケットの大転換点と見ることができる。

通じるかマツダ、自社技術への自信

 前述したマツダの藤原副社長が示した自社のディーゼル技術への自信と、ヨーロッパ市場からの撤退を表明していないことについて、マツダの広報部に方針を確認した。

 まず「マツダはヨーロッパ市場からもディーゼルからも撤退する方針はない」(マツダ広報部)とした上で、その理由を次のように説明した。

「マツダのディーゼル技術を『SKYACTIV-D』と呼んでいます。このエンジンでは燃料である軽油のエンジン内での圧縮比率を効率化することにより、他社のディーゼル・エンジンよりNOxの排出量を少なくすることに成功しています。他社のエンジンでは多くの場合、排出されたNOxを後処理するための装置を付加しているのですが、『SKYACTIV-D』はそれが不要なのです」(同)

 つまり、環境的にもコスト的にも競争優位を持っているとの認識である。そして「世界での販売台数を2023年度に200万台にするのがとりあえずの目標です」(同)とした。200万台の内訳、つまりヨーロッパだけ、あるいはエンジン種別での目標台数は示していない。ちなみに17年3月期のマツダの世界販売数は162万台だった。

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

経営コンサルタント、MBA経営代表取締役。20年以上にわたり外資4社及び日系2社で社長を歴任。業態・規模にかかわらず、不調業績をすべて回復させ「企業再生経営者」と評される。実践的な経営戦略の立案指導が専門。「戦略カードとシナリオ・ライティング」で各自が戦略を創る「経営者ブートキャンプ第12期」が10月より開講。1949年生まれ。学習院大学修士。米国サンダーバードMBA、元同校准教授・日本同窓会長。法政大学博士課程(経営学)。国際経営戦略研究学会員。著書に 『本当に使える戦略の立て方 5つのステップ』、『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(共にぱる出版)、『あなたの会社は部長がつぶす!』(フォレスト出版)、『MBA社長の実践 社会人勉強心得帖』(プレジデント社)、『MBA社長の「ロジカル・マネジメント」-私の方法』(講談社)ほか多数。
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