スバルは11月1日、国土交通省に「インプレッサ」や「BRZ/トヨタ86」などのエンジンのバルブスプリングに不具合があるとしてリコールを届け出た。対象台数は国内外で合計41万台。スバルはリコールの届け出の前の10月23日、18年4―9月期中間決算の業績見通しについて、リコール関連費用を計上するとして、当期利益を前回予想から301億円マイナスの490億円に下方修正した。この時にリコールの内容を公表しなかったことから、ユーザーに不安を与えたとして批判されている。
それだけではない。不具合の内容は、材料中の微小遺物によってバルブスプリングが折損する可能性があり、走行中にエンジンが停止するおそれがあるというもの。スバルが最初に不具合を認知したのは12年であり、リコールするまでに5年も要している。しかもスバルは、原因は明確になっていないものの、13年に不具合の原因の可能性があるとしてバルブスプリングを変更、その後は不具合が発生していない。「バルブスプリングと不具合の関係性を確認できなかった」(スバル・大崎篤常務執行役員)としているものの、「原因を把握していたのにリコールせずに放置してきた」と言われても仕方のない状況だ。
しかも今回のリコールは別の問題も持っている。スバル車は水平対向エンジンと呼ばれる独特な形状をしているため、バルブスプリングを適正なものに交換するためには、エンジンを一度取り出す必要があり、1台作業するのに12~13時間程度要するという。スバルでは海外を含めて今回のバルブスプリングのリコールを「1年程度で完了する」(大崎常務)予定だ。
スバル車は水平対向エンジンと4輪駆動による高い走行性能が特徴で、販売を伸ばしてきた。そのエンジンに不具合があり、しかも問題を把握しながら実際にリコールするまで長期間時間がかかったほか、リコール作業自体も長期間要することは「スバル車の走行性能を評価してきたユーザーを裏切るもの」(自動車ジャーナリスト)で、さらにスバルブランドの毀損は避けられない情勢だ。
中村社長は、一連の不正に関して急成長してきた歪みが背景にあると指摘した上で「品質改善を徹底してやっていきたい。時間はかかるが企業風土改革を丁寧に進めていきたい」と述べた。一方で、25年にグローバル販売台数を130万台とする中期経営計画の旗は降ろさず、新型車開発計画でも「開発のやり方を品質第一に見直す」(同)のにとどめる。完成検査の不正問題は「これで終わりにする」と言い切る中村社長だが、信用できるだけの材料は見当たらないのが現状だ。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)