2019年2月期の第2四半期決算に関して、同社の連結売上高は412億円だった。うち、舶用事業の売上高は331億円(売上高の80%)を占める。これに加え、通信およびGNSS(全地球航法衛星システム)などを手掛ける産業用事業の売上高は58億円(同14%)、その他の部分を無線LAN・ハンディターミナル事業などが占める。
売上高の構成という点では、舶用事業の重要性が圧倒的に高い。一方、売上高の増加率では、舶用事業は伸び悩んでいる。対照的に、通信およびGNSS事業の売上高は増加している。この基本的なデータからいえることは、同社にとって通信およびGNSS事業は、舶用事業に次ぐ収益の柱になる可能性があるということである。
船舶向けの機器需要は世界経済の動向に左右されることが多い。今後の展開を考えると、世界全体の船舶需要が高まるとは考えづらい。特に世界中から素材・資源を購入してきた中国では、景気の減速懸念が高まっている。それは、海運市況にマイナスだ。そう考えると、古野電気は新しい事業に取り組み、収益源の多様化と安定化を図るべき局面を迎えていると考えられる。
外国人観光客の増加
古野電気にとって、わが国を訪れる外国人観光客が増えていることは、新しい収益源を手に入れるための追い風といえる。
韓国、中国、台湾などからの外国人観光客が増加したことに伴い、外国人によるレンタカー利用が急増している。やや古いデータだが、国土交通省によると11年から15年までの4年間でレンタカーを利用する訪日外国人数は18万人程度から70万人程度へ4倍増加した。わが国でライドシェアが規制されていること、人口減少によって地方でのバスや鉄道の運行数が縮小されているなか、外国人観光客にとってレンタカーは便利な移動手段だ。それに伴い、訪日外国人が使うレンタカーによる事故も増加している。
事故の原因は複数ある。スピードの出し過ぎ、韓国や中国では右側通行であること、標識の違いなどだ。また、各国の運転免許制度の違いにより、国によって交通安全への意識にもかなりの違いがある。
そうした問題に、レンタカー運営会社の説明などで対応していくことは難しいだろう。あらかじめ、事故の多い場所、あるいは急ブレーキが多くかけられた場所を特定し、事故のリスクを低減させなければならない。そのためには外国人観光客の運転データが必要だ。