外資ファンドに子会社化されたパイオニア、「無給」宣言した森谷社長は即刻辞任すべきだ
投資ファンドはメーカーを経営できない
栄光と挫折を繰り返してきたパイオニアは、結局現時点ではキャッシュを生みだす基幹事業を喪失してしまった状況だ。
7日の発表で森谷社長は、「地図やデータの組み合わせによるソリューション・ビジネスでの成功を目指す」とした。というのは、高精度なデジタル地図向けのデータベースを持つインクリメント・ピーという子会社があるからだ。この技術資産は、これから始まろうとしている自動車の自動運転に活用できる、確かにビジネスの可能性があるものと考えられる。
しかし、インクリメント・ピーのビジネスが現在のパイオニアの財務に大きく貢献しているわけでもない。このような状況で、名門企業パイオニアは悔しくも膝を屈してベアリングの傘下に入る道を選ばざるを得なかったということだ。
今回のファンドによる子会社化に伴って、パイオニアでは連結で約2万人いる従業員(非正規も含む)のうち、約3000人程度を削減するとした。生産や販売体制の見直しに加え、冒頭に記したように経営陣も刷新する。
さて、せっかく買収した、それも100%子会社とした会社にベアリング側が新社長を送り込まないのはなぜだろう。同じ電気メーカーでも、シャープの場合は親会社となった台湾・鴻海精密工業(ホンハイ)から戴正呉氏が最初から新社長として送り込まれ、同社長の指揮のもと、V字回復を遂げている。
一般的に投資ファンドがある事業会社に投資した場合、あるいは会社を入手した場合、ゴールとするのは「利益を出した上での売却」であり、再上場も含まれる。これを「投資の出口(エグジット)」という。
利益率のよいエグジットを行うために、投資ファンドは入手した企業の企業価値を高めようとする。経営指導や支援もするし、適切と見れば経営者の送り込みも行うのが通常だ。買収した事業会社がサービス産業やレストラン・チェーンなどのフード産業などの場合は、そのオペレーションの改善やコストカットにより業容を再生させることができる。送り込んだ新社長でも、その事業会社の事業構造を見て適切な手を打てることが多い。
しかし、シャープやパイオニアのように技術特化が見られる製造会社の場合、外から乗り込んで行ってビジネスを立て直すことは難しい。日産をV字回復させたカルロス・ゴーン前会長にしても、同業他社での豊富な経営経験があったからこそ、「技術の日産」という大企業を切り回すことができた。