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この事実は、金融庁が2018年4月に公表した「地域金融の課題と競争のあり方」という資料からも確認できる。この資料の8ページには以下の図表があり、その本文中には「本業(貸出・手数料ビジネス) の利益は悪化を続けており、2016 年度の決算では地域銀行(106 行)の過半数の 54 行が本業赤字となっている」旨の記載がある。
このような現状については、日銀の黒田東彦総裁も十分に認識しているように思われる。実際、先般(2018年11月5日)の講演(於:名古屋)でも、以下の旨のメッセージを発信している。
「日本銀行としても、金融緩和の継続が、貸出利ざやの縮小などによる収益力低下を通じて、金融機関の経営体力に累積的な影響を及ぼし、金融システムの安定性や金融仲介機能に影響を与える可能性があることは十分に認識している。すなわち、低金利環境や厳しい競争環境が続く中、金融機関が、収益確保のためにリスクテイクを一段と積極化すれば、将来、万一大きな負のショックが発生した場合、金融システムが不安定化する可能性がある。また、低金利環境が続くもとで、金融機関収益の下押しが長期化すると、貸出姿勢が消極化するなど、金融仲介が停滞方向に向かうリスクもある」
「週刊エコノミスト」(毎日新聞出版/12月4日号)でも、2018年3月期の公開情報に基づき、地方銀行64行の預貸業務の収益性を分析し、その8割が赤字になっているとの試算結果を掲載している。バブル崩壊で1990年代後半に顕在化した金融危機は、納税者の負担で処理したことは多くの国民の記憶に残っているはずだ。次回はどのような形や経路で副作用や歪みが顕在化するか、現時点では筆者も予測不可能だが、マグマが滞留しつつあることは明らかであり、「金融政策の正常化」の方法につき、冷静かつ真剣な議論を行う時期にきているのではないか。
(文=小黒一正/法政大学経済学部教授)
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