毎年恒例のことながら、年末の経済雑誌では新年の予想記事が特集されます。そのなかには株式相場の予想もあります。エコノミストやアナリストといった株式の専門家が、新しい1年の株式相場を予想します。ところが、それがなかなか“当たらない”のです。
たった1日で、ほとんどの専門家が“外れ”
昨年12月に発売されたある経済誌では、株式の専門家が日経平均株価の動きを予想していました。9人のうち、6人まではもっとも下がった時点でも2万円以上としていました。ところが新年初日の取引である1月4日の時点で、日経平均株価は1万9,561円。半分以上の人が、ここまで下がることを予想できませんでした。1年間の相場予想にもかかわらず、わずか1日ともちませんでした。予想を出してもらう締め切りが12月中旬だったために、12月後半からの急落は想定できていなかったのです。
今年だけが特殊なわけではありません。昨年も2月に大幅な下落があり、過半数の予想を超えて下がってしまいました。1年間の予想が、およそ1カ月で“外れ”となってしまったのです。予想を公表している専門家に問題があるのではありません。それぞれ、大手金融機関系のシンクタンクなどに所属する、有名な市場のプロばかりです。人のことばかりではなく自分のことも白状すると、私自身の予想も外れてばかりです。どうして、なかなか予想が当たらないのでしょうか。
近年は、ヘッジファンドなど、大量の資金を短期で売買する投資家が増えています。そのために、以前と比べて、市場の変動の幅が大きくなっています。特に、コンピューターによる「プログラム売買」では、市場の動きに追随するために「相場が上がると買い、相場が下がると売る」という取引を行います。多くのヘッジファンドが同じことをすると、「上がる時はさらに上がり、下がる時はさらに下がる」と上下の振幅が大きくなります。最近では、日経平均株価が前日比で1,000円前後も動くことも珍しくなく、エコノミスト泣かせの相場になっているのは確かです。
バックミラーを見ながらの運転
最近の傾向だけでなく、“予想”そのものが、そもそも外れやすい性質を持っています。株式投資は、今後の株価の動きを予想して投資をします。しかし、今後のことはわかりませんので、誰もが過去の状況を基に今後を予想します。「今までの状況が今後も続く」という考え方が基本になっています。これは、金融機関の専門家でも、個人投資家でも変わりありません。「株式投資は、バックミラーを見ながら車を運転するようなものだ」と言われることもあります。