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高井尚之が読み解く“人気商品”の舞台裏

“比類なき街”上野・アメ横、70年間客が殺到し続ける秘密…年末の客減で迎えた岐路

文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

「安さ」と「勢い」で売る

“比類なき街”上野・アメ横、70年間客が殺到し続ける秘密…年末の客減で迎えた岐路の画像3スポーツ用品が充実する「ZYUEN(ジュエン)」

「アメ横は安い」が、消費者の基本認識だ。実際に格安商品は多い。筆者も最近、1箱90円(税別)の箱入り茶菓子を買って、当日夜の会食に参加した知人に配ったことがある。「アメ横で安かった」と言って渡したら、みんな喜んで受け取ってくれた。

 もちろん、「あの商品については、それほど安くない」といった意見もあるだろう。だが、それは「木を見て森を見ず」に近い考えかもしれない。

 いつの時代も、買い物の楽しさは“掘り出し物”だ。たとえば「これを買おう」と、目的意識を持って商品を探す。あるいは当初は買うつもりのない商品を「買ってみようか」と思い、価格を見る。それが思いのほか安いと得した気分になる。節約ではなく「達成感」なのだ。

 一方、お客をその気にさせて売る店もある。

「この中にチョコレートが入ります。入れちゃえ、入れちゃえ~」で有名な志村商店のパフォーマンスもアメ横名物だ。1袋1000円で、2000円分以上の菓子が入る。

 こうした勢いに誘われて買うのは「参加型」でもある。この場合の消費者の心理は、催事感覚だ。菓子が苦手な人は少ないので、もし同じ品が多く入っていても、他人にあげやすい。もらったほうも負担を感じないで済む。

 衣料の掘り出し物なら、近くに格安Tシャツが揃う店がある。リュックなどのカバンが3000円台という店や、スポーツシューズが5000円未満からの店もある。

 もちろん今は、Tシャツは「ユニクロ」や「ジーユー」、スポーツシューズは「ABCマート」のような大手チェーン店がある。だが、路面を歩きながらの買い物は、商業施設内の“ワンストップショッピング”とは別の楽しさなのだ。

「東日本大震災後」は厳しかった

 そんなアメ横にも、過去何度か危機が訪れた。

「最近では、東日本大震災後が厳しかったね」と、勤続46年のベテラン販売員は明かす。

 もともとJR上野駅は、東北地方や北関東地方と都内を結ぶ大動脈として栄えた「北の玄関口」だ。2011年3月11日に発生した大地震と津波で、東北と北関東が甚大な被害を受け、同地域からのお客さんが激減した。福島原発の影響で首都圏も計画停電を実施し、消費マインドも冷え込んだ。

 被災地が少しずつ復興するにつれて消費意欲も出て、アメ横の客足も戻ったのだ。

 ただし、18年の年末は例年に比べて客足が伸び悩み、「年末5日間で約157万人」(アメ横商店街連合会)だったという。

「理由は調査中ですが、年明け早々から営業する大手小売店が増え、以前ほど『年末の買い出し感がなくなった』という声もあります。一方で『働き方改革』もあり、正月はきちんと休もうという大手の動きも出てきた。さまざまな対策を考えながら注視しています」(同)

 筆者が今月、2度にわたり平日に視察した際の客足は順調だったが、稼ぎ時の年末の訪問客減少は、気になる部分だ。

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。これ以外に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(同)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。

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