加盟店付属契約の「本部の許諾を受けて文書による特別の合意をしない限り、24時間未満の開店営業は、認められないものとする」の一文に従えば、松本氏の契約違反は明らかだが、問題は「今日の実情に合わせ」の“今日”がいつなのかということである。流通ジャーナリストの渡辺広明氏は、次のように語る。
「現在のセブンと加盟店の契約内容は、人口が増えて経済が大きく成長していることが前提となっており、これからシュリンクしていくという時代の変化に対応して、うまく変えていくべきだと思います。24時間営業以外にも、営業の形態にはいくつも選択肢がありますが、本部としては夜閉めてしまうと、ロイヤルティ収入減につながりかねないので、実証実験などの慎重な対応が必要なのでしょう。
セブンの鈴木敏文元会長がつくったコンビニのモデルは、オフィスビルや地下鉄の駅の閉鎖商圏や繁盛商圏の店舗のコンビニ化などへの展開なら、まだ出店余地はありますが、それ以外ではもう飽和状態です。しかも、人手不足でアルバイト店員がなかなか集まらず、今後改善の見込みも基本的にありません。今回のケースもそれが原因のひとつですからね。少子高齢化で時代は劇的に変化している。コンビニは変化対応業ですから、深夜から早朝にお客がいないなら、24時間営業は採算の合わない店舗に関してはやめてもいいと思います」
大手コンビニチェーンのなかで24時間営業を行っていないのは、北海道を中心に1190店舗を展開するセイコーマートだけだ。北海道では「セコマ」の愛称で知られ、出店はセブンより早い1971年8月。コンビニ定番のおでんなどは置かず、手づくりの惣菜や弁当を中心に独自の店舗展開にこだわっている。深夜は客が少ないので、人件費と光熱費を抑えるため24時間営業はしていない。6時~24時の18時間営業が中心だ。
「セイコーマートは約7割の店舗が、24時間営業を実施していません。その理由は8割前後が直営店のため、店舗の深夜営業の赤字は本部の負担になるからです。しばらく人手不足問題は改善しないなかで、コンビニは生活インフラといわれますが、店舗オーナーにそこまで求めるのは酷な話です。実際、生活インフラである公共交通機関も24時間動いているわけでもありません。至る所にコンビニだらけですが、深夜にすべての店舗を開けておく必要があるのでしょうか。輪番制などにして、一定のエリア内で2、3店舗開いていれば十分でしょう。でも、それは民間企業だけでは無理なので、自治体や国が関与して乗り出すべきです」(前出・渡辺氏)