世界第2位の経済大国として世界に存在感を示している中国では、収入の増えた女性たちの美意識の高まりにより、化粧品市場が盛り上がりを見せている。こうした需要の増加に伴い、日本はもとより欧米や韓国などの化粧品メーカーが進出しており、今年になってからもスペインやイタリア、アイスランドなどのメーカーが新規参入してしのぎを削っている。
だが、さまざまなメーカーが参入する一方で、なかには撤退を余儀なくされる企業も少なくない。
日本発の「炭酸美容」で中国市場に参入
「失敗した企業の特徴として、日本独特の企業カルチャーを持ち込みすぎているように思います」
そう語るのは、株式会社メディオン・リサーチ・ラボラトリーズ(以下、メディオン)の日置那保子社長。メディオンは、医学博士が治療薬の研究中に発見した炭酸の美肌効果に関する特許を持っており、日本発の美容法である「炭酸美容」のCO2ジェルマスク(炭酸パック)などのブランド「メディプローラー」を展開する企業で、5年ほど前から中国市場に進出している。
「日本企業は諸外国の企業に比べて仕事の進め方に独特なところがあり、細かすぎるルールや意思決定の遅さが中国のビジネスカルチャーとは合わないようです」(日置社長)
上海に中国の拠点を置くメディオンは、子会社の設立当初から現地の責任者として中国人を採用している。
「中国でビジネスを成功させるためには、『まず中国人に儲けさせなければいけない』という話はよく耳にしていましたし、日本式のビジネスのやり方は中国とは大きく異なるので、やはり現地をよく知る中国人に任せるのがいいだろうと判断しました」(同)
欧米ブランドvs.韓国のイメージ戦略vs.ジャパンクオリティー
メディオンは現在中国で2ブランドを展開しており、中国全土で約1000店舗の小売店で販売されている。2018年には1箱6枚入りで上代(小売価格)が1万円超の炭酸パックを10万箱以上、バラ売りも含めると100万枚以上を販売した実績もあるが、立ちはだかるライバルは数多い。
「百貨店のカウンターでは、欧米系の高級ブランドが高い占有率を誇っています。韓国ブランドは有名人を起用したプロモーションで大々的に広告を展開するなど、イメージ戦略に長けていますね」(同)
ただし、プロモーション重視の韓国メーカーは、爆発力はあるもののリピート率が低い傾向にあり、品質に対する信頼度は日本製品のほうに分があるといわれている。また、16年のTHAADミサイル配備問題が逆風になり、中国市場での韓国メーカーのシェアは低下を続けている。
こうした政治問題が絡むのも、中国市場の特徴だ。市場参入に先だって中国での化粧品衛生行政許可証を申請する際に、尖閣諸島問題の影響で手続きがストップしてしまい、許可証が発行されるまでに約5年の月日を費やした日本メーカーもあるという。
だが、政治問題は逆風ばかりを生むわけではない。