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関西スーパー、株価5割減の大暴落…H2Oとの統合に市場が明確に拒否反応

文=編集部
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関西スーパー(「Wikipedia」より)

 12月15日の東京株式市場で関西スーパーマーケット株が大幅安となった。前日比299円(21.5%)安の1090円まで売られた。関西スーパーとエイチ・ツー・オー(H2O)リテイリング傘下の、非上場の食品スーパー2社との経営統合をめぐり、最高裁判所は14日、統合手続きの差し止めを求めたディスカウントスーパー、オーケー(横浜市、非上場)の許可抗告を棄却する決定を下した。

 許可抗告とは、高裁に抗告の許可を申し出し、許可が得られた時に、最高裁に行うことができる抗告のことだ。これを受けてオーケーは1株2250円でのTOB(株式公開買い付け)の断念を発表。株価を押し上げる要因となっていたTOBの期待が剥落し、売りが膨らんだ。

 関西スーパーとH2Oは12月15日に経営統合した。関西スーパーはH2Oが58%出資する子会社となった。H2O傘下の阪急オアシス、イズミヤと一緒になり、22年2月、社名を関西フードマーケットに変更する。

 関西スーパーをめぐっては、8月末にH2Oの子会社との経営統合が発表された後、オーケーが買収の意向を表明。10月末の関西スーパー株主総会では僅差でH2Oとの統合案が可決されたものの、集計作業に疑義があるとしてオーケーが神戸地裁に統合差し止めを申請。神戸地裁は差し止めを命じたが、大阪高裁では取り消された。12月14日、最高裁は総会決議の有効性を認め、高裁の判断が確定。オーケーの主張が退けられるかたちで決着した。

 関西スーパーの買収を断念したオーケーは12月22日、保有していた関西スーパーの全株式(8.04%)を処分したとの変更報告書を関東財務局に提出した。統合案が可決されたことを受け、関西スーパーに株式の買い取りと請求する権利を行使した。オーケーは「買い取り価格の協議はこれから行う」としている。買い取り価格は協議の上、決められることになる。オーケーは関西スーパーの上場来高値の1株2250円でTOBの意向を表明したことを踏まえ、二宮涼太郎社長が「2250円は(買い取り価格の)目安になる」と語った。

 足元の関西スーパーの株価は1038円(12月22日終値)。オーケーがTOB発表前9月2日の株価(1374円)を大きく下回る水準だ。

 関西スーパーは「他の株主に説明がつかない高値での買い取りには応じられない」(関係者)だろうから、買い取り価格の交渉が難航するのは必至。買い取り価格が22年1月14日までに決まらなかった場合、裁判所に価格決定の申請を行う。統合案の是非の判断を裁判所に仰いだように、買い取り価格も裁判所に決めてもらうことになる。

非上場子会社との統合という奇策の是非

 オーケーが1株2250円でのTOBという実にシンプルな提案したのに対して、H2O案は同社の子会社の株式と関西スーパーの株式を交換するという“クセ球”だった。H2O子会社が非上場のため市場価格がつかめないことが、比較をいっそう難しくした。

 双方がTOBを提案しているのであれば、どちらが高いかで判断できる。ところがH2Oは関西スーパーの買収にあたって、100%子会社のイズミヤ、阪急オアシスとの株式交換方式を選んだ。オーケーのTOB価格とH2Oの異なる方式のどちらが株主にとって有利なのか、判断するのが容易ではなかった。

「もしH2OがオーケーのTOB価格と比較できる案を出したら、劣勢になったろうから、奇策を弄した」(関係者)と批判された。オーケーは非上場のオーナー会社だから、オーナーの一存でTOB価格は決められるし、割高でもオーナーがこれでいいと決めればOKである。だが、H2Oは上場会社。多くの株主がおり、割高なTOB価格は提案できない弱味を抱えていた。統合後、H2Oはわかりにくい経営統合の歪みを、どう是正していくか。今後に残された大きな経営課題である。

H2Oと関西スーパー双方の先行きは難路

 関西スーパーとの経営統合で親会社になったH2Oは、総会後の数値目標を明らかにしている。22年2月に関西スーパーとイズミヤ、阪急オアシスの3社を束ねる中間持ち株会社、関西フードマーケットを発足させるのが第1のステップ。単純合算で売上高4000億円規模、店舗数が216店となる。

 H2Oはイズミヤと阪急オアシスの利益改善を図っていく。レジで商品10点の精算にかける時間を30秒短い1分20秒にするなど細かい改善点を500点以上洗い出し、それぞれの項目に利益目標を設定するなど、スーパー子会社の事業の構造改革を進めていく。

 第2のステップは2年後をメドにしている。3社の営業利益の予想は、22年3月期は72~73億円だが、これを26年3月期に約60億円積み増し136億円とする計画だ。H2Oは阪急うめだ本店(大阪市)など百貨店事業の苦戦で、21年3月期まで2期連続で連結最終赤字に陥った。食品スーパーを第2の経営の柱に据える方針だが、百貨店が食品スーパー経営に成功した事例は少ないというアナリストが圧倒的に多い。百貨店は場所貸し業であり在庫のリスクが小さい。一方、食品スーパーは自らのリスクで在庫を抱える。ビジネスモデルがまったく違う。

 三越伊勢丹ホールディングス、J.フロント リテイリング、高島屋は食品スーパーから撤退した。関西スーパーを子会社にしたH2Oは、先行する大型百貨店に逆行して、食品スーパー事業を強化する。

 市場の見方は厳しい。H2Oの足元の株価は年初来高値の1020円(6月9日)から798円(12月22日)へと2割強、下落した。関西スーパーにいたっては年初来高値の2213円(9月8日)から1038円(12月22日)へと5割以上も値を下げた。

 両社とも業績を改善させ、株価上昇をテコに株主の期待に応えなければ、世間を騒がせたM&Aは成功したとはいえない。

(文=編集部)

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