アニサキス騒動、くら寿司とスシローの違い
もちろん、無添騒動以外の要因も影響しただろう。たとえば、魚介類を食べて寄生虫「アニサキス」による食中毒にかかったとの著名人による被害報告が17年に入って相次いだことが挙げられる。特に芸人の渡辺直美さんが同年4月にアニサキスによる食中毒にかかったとツイッターに投稿した影響も大きいだろう。以後、アニサキスに関する著名人の言及や報道が相次ぎ、世間に広く知れ渡るようになった。これにより、回転ずしチェーンが敬遠されるようになった面はある。
競合の回転ずしチェーン「スシロー」の既存店客数の推移を見てみるとわかりやすい。16年10月~17年3月は前年同期比0.2%増と前年を上回ったが、続く17年4~9月は2.5%減と一転してマイナスとなった。アニサキス騒動が影響したとみられる。
だが、その後の17年10月~18年3月は横ばいとなっており、アニサキス騒動の影響は感じられない。さらに、続く18年4~9月が3.8%増となるなど、その後は好調が続いている。アニサキス騒動の影響は一時的なものだったといえるだろう。
一方、くら寿司ではアニサキス騒動が沈静化した後も客離れが続いた。騒動前の15年11月~16年10月の客数は前期比0.8%増と、わずかながらもプラスだった。続く16年11月~17年4月は0.5%減だった。そして、アニサキス騒動が直撃した17年5~10月は2.7%減とマイナス幅は拡大した。
問題なのは、スシローとは違い、その後も客離れが続いたことだ。17年11月~18年10月が2.0%減とマイナスだった。さらに、続く18年11月~19年4月は4.4%減となっている。アニサキス騒動以外の問題が影響したことがうかがえる。
アニサキス騒動がひと段落した後もくら寿司で客離れが続いたのは、イメージが低下していたことが大きいだろう。無添騒動でイメージが悪化して客離れにつながり、そして不適切動画が追い打ちをかけたのではないか。
昨今はSNSによって情報が瞬時に広がる時代だ。それにより、イメージの良し悪しが、いとも簡単に変わってしまう時代にもなった。イメージの悪化は客離れにつながる。SNSの発達が続くなか、イメージ管理の重要性は日を追うごとに増しているといえる。くら寿司で起きた「バイトテロ騒動」「無添騒動」「内定取り消し騒動」がそのことをよく表しているといえるだろう。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)