若者向けファッションビルを展開するパルコは、「宇都宮パルコ」(栃木県宇都宮市)を5月末に、「熊本パルコ」(熊本県熊本市)を来年2月末に、それぞれ閉店すると発表した。
2017年度の売上高は宇都宮パルコが30億6100万円(前年比82.2%)、熊本パルコが49億8900万円(同79.9%)で、全盛期に比べると宇都宮パルコは3分の1、熊本パルコは2分の1近くにまで減少。とりわけ宇都宮パルコは、郊外にショッピングセンターやアウトレットモールが開業したことによる“商業環境の変化”を閉店理由に挙げている。
ファッションビルを代表する存在であるパルコがこうも相次いで閉店となると、もはやその業態自体が時代に即していないのではないかという疑念が、頭をもたげることだろう。
そこで今回はVMIパートナーズ合同会社代表で、ファッション事業の戦略構築を専門とする黒川智生氏に、パルコの閉店が意味するところと、ファッションビルの現在とこれからについて解説してもらった。
意味することは、ファッションビルの凋落……ではない?
「まず結論から申し上げると、パルコの2店舗がたて続けに閉店するからといって、ファッションビルという業態自体が厳しいわけではありません。パルコが先駆者となり、ほかにもたくさんのファッションビルが建てられてきましたが、すべてのビルの業績が落ちているというわけではなく、ビルごとに差が大きく開いているのが現状なのです。
今回閉店が発表された宇都宮や熊本のパルコのように、地方都市で業績が振るわないビルの特徴としては、一昔前に流行ったブランドの店舗ばかりだったり、テナント全体におけるアパレルブランドが占める割合が高かったりといった印象がありますね。
ブランド側からすると、ブランドの本部が東京や大阪などにある場合、離れたところで店舗を運営するにはノウハウやコストが必要となるため、地方都市で運営するのが難しいという状況もあります。また当然、ビルの集客が落ちていたり老朽化が進んでいたりすると、ブランド側は仮に新店舗をオープンするための初期投資をしても、今後どのくらい長く営業できるのか、集客はどのくらい期待できるのかということを考えなくてはいけません。そこもまた新しい出店者が、パルコのようなファッションビルになかなか集まらない理由の一つとなっていたのでしょう」(黒川氏)