ファッションビルの生き残り戦略はアパレル率を減らすこと
宇都宮と熊本のパルコが閉店する一方で、近年特に調子がいいファッションビルは、どこが挙げられるのだろうか。
「扱っているのは必ずしもファッションだけではないですが、駅ビルは元気があります。例えば新宿ルミネエストやアトレは実際に売上の順位、売り場効率を見ても好調に推移しています。地域で見ると、特に東京や大阪の駅ビルは比較的好調なのですが、地方は良いところと悪いところの差が極端です。
また、特色あるドラッグストアを入れている駅ビルは調子がいい傾向があります。ドラッグストアは消耗品を含めて品揃えしている関係上、お客さんの来店頻度が高いため、そのおかげでアパレルブランドの売上が伸びている面があります」(同)
業績を伸ばしているファッションビルも少なくないようだが、特に地方には業績の振るわないところも多いようだ。では、それらのビルが今後、業績を回復させていくためには、どのような施策が考えられるのだろうか。
「こう言ってしまうと、“ファッションビルの立て直し策”としては矛盾を感じる方もいるかもしれませんが、洋服を扱う比率を減らしていくことが一つの方法でしょう。例えば靴やバッグなどの服飾雑貨と、文房具や台所用品などの生活雑貨を組み合わせて、自分がすぐ使うような商品だけでなく、ギフトなどのニーズをしっかり考えているような店舗を増やす。こうすることで来客者数の増加につながるのではないでしょうか。
また、男性物と女性物を一緒に扱っているカップルストアも最近は好調ですし、アニメやスポーツなどの専門性のある店舗も男女問わず集客できます。そういったトレンドをおさえた店舗を誘致し、ファッションビル側も運営精度を上げていけば、ビル全体の来客者数が増加し、おのずと売上高も上がるでしょう」(同)
宇都宮と熊本のパルコが閉店するというニュースから受ける印象よりも、ファッションビルの未来は、特別暗いわけではないようだ。しかし、時代に合わせて戦略をアップデートしていく必要があることは、どの分野や業態にも共通している。今回のパルコの閉店は、ファッションビルの進化の過程と捉えられるのかもしれない。
(文・取材=A4studio)