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日本企業は、米中貿易戦争の影響を楽観視しすぎている…村田製作所の株価下落は危険なサイン

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 つまり、IT先端分野は米中が覇権を争うフロントラインだ。米国はGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)を中心とする自国のIT先端企業を中心に、競争力を維持、強化したい。中国はBATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)を中心に米国を上回る競争力を実現し、覇権を強化したい。米中がボタンのかけ違いから本当に互いを傷つけあう制裁の応酬に突き進むと、村田製作所の取引先企業の経営は急速に悪化するだろう。

先行を楽観視する市場参加者

 
 過去、村田製作所はアップルのiPhone向けの部品供給に注力し、成長を遂げた。昨年、iPhoneの販売台数が減少に転じ、村田製作所の業績拡大にはブレーキがかかった。18年度の後半に入ると、中国経済の減速が重なり、同社の受注が急速かつ大幅に減少した。19年度に関して、経営陣は慎重な計画を立てている。

 受注が落ち込むなか、村田製作所は電子部品の価格を引き上げることにより年度通期ベースで増益を確保した。これは、同社の技術力の高さを世界に示した。自動車の電動化などに伴い、車載分野でも同社の積層セラミックコンデンサーへの需要が高まっている。言い換えれば、村田製作所なくして、テクノロジーの高度化は難しい。

 昨年後半、中国経済が減速し、多くの企業が業績を下方修正した。事業環境が悪化するなかで価格引き上げによって収益を確保した村田製作所の経営判断は、市場参加者から非常に高く評価された。同社が技術力を高め、高付加価値の部品を提供して成長してきたことは事実だ。過去を理由に、同社の先行きを楽観する市場参加者が多い。
 
 それに加え、5G通信が実用化されることも、同社への楽観を支えている。通信アンテナ部品など5G向け部品でも競争力が高い。ファーウェイなど中国の企業に部品を供給し、5G需要を取り込むことを目指してきた。

 年内に世界各国で5G通信が始まることを控え、世界各国で“5G特需”が起きると期待する市場参加者も多い。5Gが使われ始めれば、従来よりもはるかに速い速度で大量のデータや情報を送受信できる。それは、ビッグデータの収集や分析を加速化させ、企業の生産現場などに加え、家庭版のIoTの普及にもつながるだろう。村田製作所が技術力をよりどころにしてそうした需要を取り込み、会社計画以上の成長を実現するとの期待は根強い。

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