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アラブメディアは13日、「フーシ派の攻撃によるサウジアラビアの民間人の死傷者数は1071人(うち死者112人)に上る」と報じたが、この数はサウジアラビア政府がこれまで発表してきた数字よりもはるかに大きい。
フーシ派の攻撃は空中からばかりではない。フーシ派幹部は15日、「我々はサウジアラビア領内に進軍し、これまでイエメンが被った損害に対し借りを返すときが来た」と述べた。「フーシ派が6月上旬南部のナジュラン市(人口約35万人、標高約1300m)近辺の軍事拠点を占拠し、サウジ兵士200名を死傷させた」との報道もある。
サウジアラビアにとって自国内でフーシ派と地上戦を繰り広げることは、悪夢以外の何ものでもない。サウジアラビアのムハンマド皇太子は2019年2月、実弟のハリド王子(元空軍中尉)を国防副大臣に任命して(サルマン国王の了解は得ていないとの情報がある)、イエメンへの空爆作戦を指揮させている。サウジアラビアが主導するアラブ連合軍は、国際社会からの非難にもかかわらずイエメンの首都サナアの空軍基地を含む戦略拠点に対して連日空爆を行っているが、フーシ派の攻撃を止められないでいる。サウジアラビア軍内部で不満が鬱積しており、「軍主導のクーデターが起こるのではないか」との懸念も生じている。
このように中東地域ではホルムズ海峡に加えてサウジアラビア情勢が極度に悪化しているが、日本に打つ手があるのだろうか。
筆者の答えは「国家石油備蓄の放出」を準備することである。日本には輸入量の90日分に相当する原油量(3.6億バレル)を政府が確保しているが、これまで一度も放出されたことがない。
「備えあれば憂いなし」――。未曾有の石油危機を防ぐために「伝家の宝刀」を抜く準備を、ただちに行うべきではないだろうか。
(文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員)
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