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1泊30万円…銀座に高級旅館開業 ヒューリック、銀座のビル取得攻勢

文=Business Journal編集部
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ヒューリックのHPより

 不動産大手のヒューリックは2025年に東京・銀座に高級旅館「ふふ東京銀座」(仮称)を開業する。富裕層や訪日観光客の利用を見込み、最も高い部屋は1泊約30万円とする。ヒューリック銀座ビルは、銀座の目抜き通りである中央通りに面し、東京メトロ有楽町線銀座一丁目駅と接続した好立地だ。1974年に竣工して以来、富士銀行(現みずほ銀行)の店舗が入居していたが、みずほ銀行銀座中央支店の移転に伴い、約200億円を投じ、地上12階建ての複合ビルに建て替える。

 高層階は宿泊施設、中層階にオフィス、低層階に物販店が入る。高層階の6フロアを全38室の旅館に衣替えする。広さは1室最大約130平方メートル。全室に天然温泉を使った浴室を設け、近隣の高級ホテルとの違いを打ち出す。宿泊者の3分の1は訪日観光客の利用を見込む。コロナ後を見据えた宿泊施設の開発が活発になっているが、銀座の主要通り沿いに高級旅館ができるのは珍しい。

 ヒューリックは高級温泉旅館「ふふ」を東京から1時間半程度で行ける温泉地の箱根、熱海、河口湖、日光に展開。関西では京都、奈良にもあり、現在9施設を運営している。今後、軽井沢、城ヶ島への進出を考えており、「東京銀座」を全国の「ふふ」をつなぐ起点と位置づけている。

銀座ではビルも建設

 ヒューリックは銀座の中心部に複合ビルを建設する。中央通り沿いの商業施設「銀座コアビル」の敷地や建物の一部を取得し、2027年ごろに地上12階建ての複合施設を完成させる。「銀座コアビル」の地権者と再開発に関する基本協定を結んだ。同ビルの地権者は、百貨店の松屋などを含め10者。ヒューリックは公開入札を経て、14年に優先交渉権を獲得したが、地権者の中に個人事業者もいたため、とりまとめが難航した。それでも、事業パートナーとしてヒューリックが参画することが決定したことに伴い、松屋などが保有する1820平方メートルの土地の半分以上を取得することになった。

 銀座コアビルは、東京メトロ銀座線・日比谷線・丸の内線の銀座駅に直結している。百貨店の松屋、三越、ヒューリック銀座ワールドタウンビルに囲まれた銀座4丁目交差点の至近に立地している。1971年、銀座の新しい核としてオープンして以来50年にわたり銀座の中心で営業を続けてきたが、近年は耐震性の問題が指摘されていた。新型コロナの影響でテナントの退出が相次いだことから、再開発の交渉が進展したという。

 新しいビルは地下4階、地上12階の複合施設で低層階は高級ブランド店が入居し、中層階は商業施設、高層階はオフィスとなる。ヒューリックは銀座エリアを事業戦略上の重要拠点としている。近年、「ティファニー銀座ビル」「リクルートGINZA8ビル」を取得し、並木通りにもビルを相次ぎ建設している。今回の銀座コアビルの取得で、銀座で35棟目の保有ビルとなる。

脱みずほ路線を推進、“銀座の大家さん”を目指す

 ヒューリックの前身は旧富士銀行(現みずほ銀行)の銀行店舗の管理会社だった。日本橋興業である。都市銀行は大抵、駅直結か駅近くの好立地に店舗が入ったビルを持っていたから、日本橋興業もそれなりの収益を上げてきた。

 しかし、旧富士銀行、旧第一勧業銀行、旧日本興業銀行が経営統合した。3行統合だからリストラの過程で店舗の統廃合が行われた。不良債権削減の過程で、日本橋興業がその受け皿役となることもあった。

 2006年、旧富士銀行出身で、みずほ銀行副頭取の西浦三郎氏が社長(現会長)に就任。社名を日本橋興業からヒューリックに変更した。ヒューリックは、「HUMAN(ひと)」「LIFE(生活)」「CREATE(創造)」の3つの言葉を組み合わせた造語である。社名変更を機に、ビジネスモデルを根本的に変えた。老朽化した自社物件を建て替えて、付加価値を付けて賃料を増やしていく地道な戦略を立てた。マンションは扱わずにオフィス、ホテルに集中した。

 それでも、近年はオフィスビルの比重を下げている。イトーヨーカドーの店舗をいくつか買い取った。再開発した複合ビルには、イトーヨーカドーはスーパーとして入居し、他のフロアはヒューリックが新しいテナントを入れる。イトーヨーカドーの鶴見や川崎、四街道、東大和の4店舗のリニューアルがヒューリックに任された。

 なぜ銀座を重点拠点としているのか。西浦会長は日経産業新聞(22年3月16日付)のインタビューで次のように語った。

「三菱地所や三井不動産と同じことをやっていても勝てない。(東京の)丸の内は三菱地所、日本橋は三井不動産が強く、東京建物は東京駅前に力を入れてきた。渋谷は東急グループが大家的存在で、(先発企業の)進出が少なかった街は銀座ぐらいだった」(日経産業新聞より)

 しかし、ヒューリックは2022年、大きな転機を迎えた。2月1日付で、みずほ銀行との共同保有者のみずほ証券、みずほ信託銀行、アセットマネジメントOneのヒューリック株式の持ち株比率は5.02%から3.97%に低下した。

 3月23日に開催した定時株主総会でトップが交代した。社長には副社長の前田隆也氏が昇格、社長の吉留学氏は取締役会議長、会長の西浦氏は留任した。西浦氏、吉留氏ともに旧富士銀行出身。前田氏は大成建設で不動産開発に携わり、07年にヒューリックに入社した後も開発を担当してきた。

 現在、250~260棟のビルを持つが、今後、大規模震災への備えも兼ねて、10年間で100棟の建て替え、再開発を行う。この実行に向け、前田氏に経営のカジ取りを託す。「脱みずほ」に一歩踏み出したことになる。

 ヒューリックの21年12月期の連結純利益は前期比9.3%増の695億円と好調だったが、財閥系御三家の22年3月期連結純利益は三井不動産は36.6%増の1769億円、三菱地所が14.4%増の1551億円、住友不動産は6.4%増の1504億円。御三家の背中は遠い。

(文=Business Journal編集部)

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