「客室乗務員は荷物の収納の援助はしない」「客室乗務員に丁寧な言葉遣いを義務づけていない」「客室乗務員は保安要員として搭乗しており接客は補助的なもの」。などなど、利用客を挑発するような物言いだ。インターネット上では「傲慢だ」として、バッシングが相次いだ。
どうして、こんなけんか腰の文書を作ったのか。スカイマークの西久保愼一社長(56)は、「『ヘビークレーマー』と呼ばれるお客様を作らないためにはまず、できないことをはっきりさせることだった」(日本経済新聞6月10日付朝刊)と述べている。
常習的に苦情を言うヘビークレーマー対策というわけだが、それ以外の乗客に強い反感を持たれるとは考えなかったのだろうか? 「多少の反論は覚悟していたが、ここまで物議を醸すとは思わなかった」(同)との言い訳は見苦しい限りだ。
スカイマークは6月15日から新たな「サービスコンセプト」を座席のポケットに入れ始めた。苦情の連絡先に消費生活センターを指定した部分を削除し、表現を一部改めた。しかし、「丁寧な言葉遣いを義務付けておりません」との記述を残したほか、「CA(キャビンアテンダント)の接客は補助的なもの」という基本姿勢は変えていない。CAの髪型も「安全に問題ない範囲で自由」とし、ネールアートもOK、私語に関する苦情も受け付けない。
同じ格安航空会社のスターフライヤーは、スタイルブックで髪型や服装などを細かく決めている。「統一的なスタイルの方が緊急時に乗客に安心してもらえる。CAも緊張感を維持でき、安全という最も重要なサービスにつながる」と説明する。
スカイマークは「安全性や運賃の安さの追求を一番の目標にしており、目標の実現には(サービスの切り捨ても)必要だと判断した」と相変わらずの高ビーぶりなのである。この会社は、サービスとは何かという基本的な認識に欠けているのではないのか。
だが、西久保氏の人となりを知る人々に驚きはない。この程度のトラブルは序の口。他人のことなどまったく眼中になく、ひたすら突き進むのが西久保流の生き方のようだ。安全性や公共性よりも、時価総額(株価×発行株式数)を重視する航空界の異端児なのである。