物価高騰が続く昨今、頼りにしたいのがスーパーやコンビニのプライベートブランド(PB)商品ではないだろうか。食品や日用品などの必需品がラインアップされており、一般的なナショナルブランド(NB)商品より低価格を実現しつつ、なおかつ品質もまずまずだからだ。
そんなPB業界に今年9月、新たな注目ブランドが誕生した。セブン&アイ・ホールディングスのPB「セブンプレミアム」のなかでも低価格を追求した新たなPB「セブン・ザ・プライス」が、新登場したのである。
セブンプレミアムはこれまで、通常価格帯のラインナップのほかに、高品質にこだわった高価格帯のPB「セブンゴールド」を展開してきたが、今回は消費者の多様化するニーズに応えるかたちで、低価格帯のセブン・ザ・プライスを加えた。これによってセブンプレミアムは価格の3層構造が出来上がった。
セブン・ザ・プライスは<確かな品質と安心価格で、「これはおトク」とうれしくなるいつもの商品をお届けします>というステートメントを表明し、以下の特徴を掲げている。
1.デザインの色を削減してコスト削減
2.物流と生産効率をあげて価格に還元
3.シンプルな商品作りを追求(納豆のたれやからしを入れていない等)
そこで今回は、セブン・ザ・プライスの味とコスパを確かめるべく、スーパーマーケットのライバルチェーンであるイオングループが手掛けている、低価格帯PB「トップバリュ」と比較していきたい。
それぞれのPBで「食パン」、「バターロール」、「うどん」、「納豆」、「こんにゃく」という定番5食品を購入。実食を通してわかった両社の特徴など挙げながら、忖度なしで批評して勝敗を決めていくので、ぜひ日頃の買い物の際の参考にしてほしい。
「食パン」対決
【セブン・ザ・プライス 食パン/105円(税込、以下同)】
公式サイトに「毎日食べても飽きがないおいしさの食パン」と記されているとおり、率直に言ってごくごくシンプルな味。そのままで食べると若干生地のキメの粗さが気になるが、さっぱりしておりくどさはない。
トーストにすればサクッとした食感になり、口の中で溶けていくようにフワフワになる。105円という低価格を考慮すれば、コストパフォーマンスは非常に高いと言えそうだ。しかし、しっとり感を求める方には味気なく感じて期待に添えないかもしれない。
【トップバリュ 熟成湯捏を使った しあわせのもっちり仕込み/128円】
結論から言うと、無難なおいしさではあるものの、セブン・ザ・プライスの食パンより生地のキメが細かく、そのままで食べるとほのかに甘みを感じられた。
トーストしても甘みは残り、小麦の香ばしい香りも楽しめる。しっとりしすぎず、さっぱりしすぎず、目立った特徴がないため好き嫌いも別れにくいだろう。128円という低価格を考慮すればバランスの良いおいしさだ。
では本題の勝敗だが、甲乙つけがたく“引き分け”とさせていただきたい。どちらも最低限の品質を保っており、コストパフォーマンスも高く、満足度が高い。セブン・ザ・プライスのほうが安いことはポイントだが、トップバリュのほうが味のクオリティがやや高く、その差額分を相殺していると感じたので、食パン対決は引き分けとした。
「バターロール」対決
【セブン・ザ・プライス バターロール6個入/105円】
そのまま食べた第一印象は、さっぱりしているということ。生地の気泡が大きく、フワフワしていて食べ心地は軽い。単品で食べるよりは、コロッケや焼きそばなどをサンドして調理パンとして食べるほうが向いていそうだ。
ジューシーな具材を挟んだときに、生地のさっぱり感がよく作用して、甘みやしっとり感で全体がしなることなく、食べ終わる最後まで具材を引き立ててくれそうだ。また、トーストすると小麦の香りと甘みが増すため、具材を挟まずに食べる場合はトーストがおすすめ。朝食で手頃に食べたいようなさっぱりしたおいしさだった。
【トップバリュ ふんわり食感のバターロール/88円】
セブン・ザ・プライスと比べて手に取ると重さがあり、水分を含んでいることが感じられる。特徴は噛むほどに甘みが増すこと。しっとり感もそこそこあり、特に味付けもない割にはおいしい。
さらに、88円という低価格を考慮すれば期待以上のクオリティと言えるだろう。
よって勝敗はトップバリュの勝ち。トップバリュは値段が安く、さらに美味しさは上なので、迷わず軍配を上げられた。100円を切る破格であるにもかかわらず、十分な甘みとしっとり感を兼ね備え、単品のパンとして比べたときに断然満足度が高かった。
「うどん」対決
【セブン・ザ・プライス うどん/170円】
柔らかい歯ごたえなため、コシは感じないかもしれない。コシを求める方にはその時点で評価は低くなるだろうが、柔らかめのうどんが好みの方には合っているだろう。
味わいとしては塩味も程よく小麦の香りを感じられる。これらの特徴を逆手に取れば、和風だけでなく洋風や中華風など、どんなアレンジや味付けにも馴染みそうである。
【トップバリュ コシのあるうどん/198円】
商品名で謳っているだけありコシがしっかりあり、喉越しも良い。そのクオリティはNBのうどんと比べても劣らないと思えるほど。麺そのものを味わうために、シンプルにいただきたくなるおいしさだ。
調理工程の面でも、セブン・ザ・プライスはゆでが必須だが、トップバリュはレンジもOKというのはありがたい。忙しいときにレンジで完結できるのは、助かるポイントではないだろうか。
よって勝敗はトップバリュの勝ち。多くの方がうどんに求めるコシを楽しめること、調理が手軽なことの2軸で評価が高かったからだ。トップバリュのほうが約30円高いが、30円以上のクオリティの開きがあると感じた。
「納豆」対決
【セブン・ザ・プライス 極小粒納豆/51円】
混ぜるほど細かな粒が粘り、フワフワに。さらに豆の匂いが控えめで食感が柔らかいため、ごはんと一緒にするするとかき込みたくなる。
新ステートメントで記されるとおり、たれやからし抜きの商品ではあるが、自宅にある醤油などをお好みで足せばいいので、そこまで物足りなさを感じることなく完食。約50円という圧倒的な安さを考えると、納得かつ大満足である。
【トップバリュ 北海道十勝産ユキシズカ使用 小粒納豆/127円】
一粒一粒がフカフカとした食感。粘り気よりはみずみずしさを感じ、さっぱりした味わいで、NBの納豆と遜色ないと感じた。
しかし、付属のタレがかなり甘く、豆の味わいを消すかのような濃さだった。甘いタレが好きな方には嬉しいかもしれないが、マイナス印象を持つ方も少なくないだろう。
勝敗はセブン・ザ・プライスの勝ち。味の総合的なクオリティはトップバリュのほうが上だが、なんと言ってもセブン・ザ・プライスは半額以下の51円という破格がうれしい。格安を実現するためのコスト削減の工夫が悪目立ちすることなく、シンプルな小粒納豆としておいしかった。値段をかけた分、タレの主張が強くなったトップバリュと比べて、シンプル・イズ・ベストなセブン・ザ・プライスに軍配を上げた。
「こんにゃく」対決
【セブン・ザ・プライス こんにゃく 200グラム/62円】
群馬県産のこんにゃく粉を100%使用しており、こんにゃく臭さはなく柔らかい噛み応え。薄味の煮物でも味が染み込んで、黒こんにゃくのやさしい味わいが噛むほどに深まる。
ツルツルとした喉越しで、穏やかな後味が残るのも良い。手でちぎれ、一回で使い切れる量なため、調理面でもとても便利だと感じた。
【トップバリュ こんにゃく 250グラム/88円】
セブン・ザ・プライスと比べると、わずかに弾力が増し歯ごたえを楽しめる。もちろん、こんにゃく臭さもない。
味噌田楽などシンプルにいただけば、その歯ごたえをより楽しめるだろう。マイルドな味わいで冷めてもおいしいのも魅力だ。
こちらの勝敗は引き分け。正直、こんにゃくそのものにそこまで違いはなく、どちらも満足できるおいしさを保っていた。また、トップバリュのほうが26円高いが、トップバリュは250グラムでセブン・ザ・プライスは200グラムだったため、コスパ面でもさほど変わらない。
セブン・ザ・プライスは1勝2敗2分け…トップバリュ勝利!
今回の対戦結果を振り返ってみよう。
・「食パン」対決/引き分け
・「バターロール」対決/トップバリュ勝利
・「うどん」対決/トップバリュ勝利
・「納豆」対決/セブン・ザ・プライス勝利
・「こんにゃく」対決/引き分け
セブン・ザ・プライスの1勝2敗2分け。セブン・ザ・プライスとトップバリュの五番勝負は、トップバリュの勝利となった。
ただ、五番勝負を終えての率直な感想としては、トップバリュがブランド全体として勝っているという印象は薄く、個々の商品によって優劣が異なっていると感じた。また、味は度外視で単純に価格だけで比較すると、セブン・ザ・プライスのほうが5品中4品も安かったので、価格重視の人にとっては、セブン・ザ・プライスはかなりおすすめなPBといえそうだ。
いずれにしても、セブン・ザ・プライスの商品もトップバリュの商品も、今回紹介した10品は全て、価格を考えれば十分においしく食べられる安心感があった。新登場したセブン・ザ・プライスは、我々の生活を助けてくれるありがたい新PBといえるだろう。
※情報はすべて11月3日時点のものです。