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ネット生保、曲がり角は本当か?高い成長期待、新規参入続々、危機感募らす大手既存生保

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ネット生保、曲がり角は本当か?高い成長期待、新規参入続々、危機感募らす大手既存生保の画像1「Thinkstock」より
 インターネット専業の生命保険会社が成長の限界を迎えている、との指摘が増えている。「ネット生保の雄」と呼ばれたライフネット生命保険は新規契約が前年実績を割り込む状況が続き、アクサダイレクト生命保険は金融機関や代理店での販売も模索し始めた。ネット生保は、本当に曲がり角を迎えたのだろうか–

 9月21日付朝日新聞記事『ネット生保が脱ネット』はネット専業2社の不振を報じたが、これを読んだ国内大手生保関係者は「まあ、生命保険はネットに向かないんだよ」と溜飲を下げた。

 08年にネット生保に参入した2社だが、2013年3月期には、08年の参入後初めて個人向け保険の新規契約高が前年割れ。記事中にはなかったが、9月のライフネット生命保険の新規契約高は同23.2%減の276億円となっている模様。

 また、アクサダイレクト生命・斎藤英明社長は同記事の中で、ネットを中心に他のチャンネルを検討する方針を表明。朝日以外の複数の新聞のインタビューでは「収益を確保するには(現状の)3~4倍の規模が必要」と想定外の苦戦を吐露する。

 オリックス生命保険や楽天生命保険など新興他社もネット販売に続々と参入したが、13年3月期のネット生保の保険料収入は、保険業界全体の0.1%にも満たない。各社からは「もう少し伸びると思っていたが」という恨み節が聞こえてくる。保険業界に詳しいアナリストは「どのような商品でも真新しさに飛びつく層はいる。新しいものに食いつく層を取り込み終わり、成長が鈍化したのでは」と語る。

 こうした動きに安堵の表情を浮かべるのは、ネット生保の動きに戦々恐々としていた営業職員による販売チャネルが主力の国内大手。前出の国内生保の関係者は「保険は基本的に勧められて入る商品。積極的に自分から商品を選んで買う層はわずか。契約期間も長く、変更しにくい。伸び悩みは、その表れ」と語る。

●拡大余地大きいネット生保市場

 ただ、保険各社がネット販売に旨味を感じているのは確かで、実際に参入企業は絶えない。11年にオリックス生命保険が、翌12年には楽天生命保険や損保ジャパンDIY生命保険が参入。13年9月にはチューリッヒ生命がネットでの申し込み受付を開始した。SBIホールディングスは英保険大手プルデンシャル傘下の国内生保、ピーシーエー(PCA)生命保険を買収後にネット生保に衣替えする方針だ。参入した生保の関係者のひとりは「0.1%にも満たないということは、伸びる余地が大きいということ。ライフネットの出口治明会長などは1割程度にはなると話しているが、1割としても現状の100倍以上」と強気の姿勢を見せる。

 営業職員チャネルを主力とする老舗の大手国内生保も、常にビジネスモデルの調査はしている。ある大手生保社員は「我々が前提としていたビジネスモデルが時代に合わなくなってきている。専業主婦に『夫が死んだら大変でしょ』と勧めてきたが、共働きも増えている。そのため、家に昼間訪問しても、会えないケースも多い。また、会社の上司が部下に知り合いの生保レディーを紹介するといったケースもあったが、雇用も流動的でドライな職場も多く、最近では期待できない。ネットが再成長段階に入れば、踏み込む準備はしている」と内情を明らかにする。

 一見、苦境にあるネット生保だが、成長性を否定する声は実は少ない。非婚化が進み、ネットに親しんだ若年層の年齢が底上げされた時に何が起こるのか。少子高齢化で死亡保険よりも医療保険のニーズが高まるなど、構造変化は起きている。保険業界の地殻変動が、ゆっくりだが着実に進んでいる。
(文=黒羽米雄/金融ジャーナリスト)

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