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ロッテリア「あえて行く理由がない」のに業界3位の不思議…真空地帯に鎮座

文=佐藤勇馬、協力=稲田俊輔/「エリックサウス」総料理長
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ロッテリア公式サイト LOTTERIA
ロッテリア公式サイト LOTTERIA

 ロッテグループからゼンショーホールディングスが買収し、今春からゼンショー傘下となった「ロッテリア」。ハンバーガーチェーンとしては業界3位(ケンタッキー・フライド・チキンを含めない場合)の地位を誇っているが、ネット上では「マックやモスに比べて特徴がない」「立ち位置がよく分からない」といった声が散見される。それでも業界3位を維持できるロッテリアの魅力と戦略について、飲食業界の識者に解説してもらった。

 ハンバーガー業界では、日本マクドナルドが2022年12月期決算の売上高が約3523億円、同年末時点の店舗数2967店舗で圧倒的な業界トップとなっている。業界2位のモスバーガー(モスフードサービス運営)は、2022年度連結経営成績の売上高が約850億円、店舗数は今年9月時点で1294店舗。業界3位のロッテリアは売上高が非公開だったが、買収前の2020年の時点で売上高250億円前後と推測され、今年1月時点で店舗数は350店舗ほど。マクドナルドとモスバーガーの二強にかなり離されてはいるが、国内3位というのは十分に立派で、だからこそゼンショーも「価値がある」と踏んで買収したのだろう。

 しかし、ネット上ではロッテリアに対してあまりポジティブな意見は見かけない。その理由としては「特徴のなさ」がある。マクドナルドは全メニューが比較的安めで、先述したようにダントツで店舗が多いため立地や利便性に優れ、地方などは「ハンバーガー店はマクドナルドしかない」という地域も珍しくない。また、モスバーガーは商品の品質が高いイメージがあり、出来立て商品の提供やヘルシー志向といった魅力を訴求している。また、業界4位に成長したバーガーキングはボリューミーで食べごたえのあるメニューが目立ち、がっつり食べたい派にとって魅力的だ。

 それぞれ持ち味があるのだが、ロッテリアについては「これといった特徴がない」「わざわざロッテリアを選ぶ理由がない」といった声がネット上で多く上がっている。実際、支持の低さはアンケート調査でも浮き彫りになっているようだ。

「一番好きなハンバーガーチェーン店」調査で得票率1.8%

 今年6月にLINEが全国の15歳~64歳の男女を対象にした「ハンバーガーチェーン店」に関する調査の結果を発表した。「一番好きなハンバーガーチェーン店は?」という質問では、マクドナルドが得票率47.9%で1位に。2位がモスバーガーで得票率23.7%、3位がケンタッキー・フライド・チキンで5.8%、4位がバーガーキングで5.4%。ロッテリアは得票率わずか1.8%で5位となった。年代別で見ると、ロッテリアは10代で3位、50代で5位になっているものの、20代、30代、40代、60代ではベスト5にすら入っていない。

 好きな理由としては、マクドナルドは「立地がいい」「値段が安い」「ドライブスルーが利用できる」が上位に。モスバーガーは「パテ(肉)がおいしい」「バンズ(パン)がおいしい」「出来立て・作りたてのメニューがある」が上位で、おおむね先述したイメージの通りの支持理由になっている。そう考えると、やはりロッテリアの支持の低さは「特別に好きと思えるような特徴がない」ということに由来すると推測できそうだ。

 だが、それでもロッテリアは「業界3位」の地位にいる。このロッテリアの立ち位置について、飲食プロデューサーで南インド料理専門店「エリックサウス」総料理長の稲田俊輔氏はこのように分析する。

「マックは時代ごとに話題性のある商品を投入しつつも、その中心軸は常に、日本初上陸時以来のシンプルかつソリッドな定番商品に置き続けています。対して、モスは最初から日本人の嗜好に徹底的に寄り添い、最近ではファミリー層もより安心して使えるような路線を打ち出しています。つまり両者は両極端であり、それぞれが強烈な個性を打ち出しているといえます。また、それが内外装を始めとする店づくり全体にも表れています。それに対して、業界3番手であるロッテリアは、ちょうどその両者の中間に位置している印象を受けます。商品も、どこか両者のヒット商品を意識した、あるいはそこを起点にアレンジを加えたものが目につく印象です」(稲田氏)

個性が薄いことこそが個性

 そうなると、やはりロッテリアは「特徴のないハンバーガーチェーン」ということなのだろうか。それなのに業界3位になれるのはなぜなのか。

「極端な言い方をすると、ロッテリアは個性が薄いことこそが個性です。普段モスに行く人もマックに行く人も、その時たまたまロッテリアがあれば、そちらを選択することに特にためらいはなさそうな気がします。ただ、この戦略は常に競合他社の出方に合わせた臨機応変な対応も求められるため、ある意味では不安定で脆弱な部分もありそうです」(同)

「特徴のなさ」によって、マック派もモス派も取り込める懐の深さが生まれたということか。しかし、それだけだと強い個性があるバーガーキングや女性層の支持が高いフレッシュネスバーガーなどに追いつかれてしまいそうだが……。

「個性がないとはいっても、ロッテリアには極めてオリジナリティの高い看板商品があります。それが『絶品チーズバーガー』です。シンプルながら印象の強い味わいで、きっとハマっている固定ファンも多いことでしょう。しかしこれも見方によっては、マックほどソリッドではなく、かといってモスほどファミリーに寄っているわけでもなく、ほどほどに本格的で同時に親しみやすさもある、やはり中間的な着地の商品とも言えるかもしれません。

 このようにロッテリアは、ロッテリアならではの強烈な個性そのものは薄いともいえるでしょう。しかし、先ほど述べたようにマックとモスの2トップは真逆の個性を持っています。その間には真空地帯といってもいい部分があり、そこにすっぽりと収まるという形で独自のポジションを確立しているのがロッテリアなのではないでしょうか。フレッシュネスやバーガーキングは、またそれぞれ独特の個性の強いポジションを指向しているので、ロッテリアの代わりは務まりません。今後、ロッテリアがまるでサーフィンのようなバランス感覚で荒波を乗り切っていくのか、あるいは新たな独自路線で『安住の地』を求めるのか、注目していきたいところです」

(文=佐藤勇馬、協力=稲田俊輔/「エリックサウス」総料理長)

稲田俊輔/「エリックサウス」総料理長

稲田俊輔/「エリックサウス」総料理長

料理人・飲食店プロデューサー。鹿児島県生まれ。京都大学卒業後、飲料メーカー勤務を経て円相フードサービスの設立に参加。和食、ビストロ、インド料理など、幅広いジャンルの飲食店の展開に尽力する。2011年、東京駅八重洲地下街に南インド料理店「エリックサウス」を開店。現在は全店のメニュー監修やレシピ開発を中心に、業態開発や店舗プロデュースを手掛けている。近著は『食いしん坊のお悩み相談』(リトル・モア)。

Twitter:@inadashunsuke

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