14年3月期の業績見通しについて、これまで公表していなかった売上高を5兆4500億円、最終利益を2000億円とした。経常利益のみを公表していたが、経常利益は従来予想の3000億円を3400億円に上方修正した。前年実績(新日鐵・住金の合計)比3.9倍になる。
●製鉄所統合と高炉集約を加速
今後は、一層の合併効果を引き出す施策として、近隣にある旧新日鐵と旧住金の製鉄所を統合する。八幡(北九州市、旧新日鐵)と小倉(同、旧住金)、和歌山(和歌山市、旧住金)と堺(堺市、旧新日鐵)、君津(君津市、旧新日鐵)と東京製造所(東京・板橋区、旧新日鐵)をそれぞれ14年4月に統合する。製鉄所間の生産分担の見直しで輸送費を減らすなど、年間600億円の合併効果を着実に積み上げていくという。
新日鐵住金はこうした製鉄所の統廃合に加えて、16年3月末までに君津製鉄所の高炉1基を停止するなど生産体制の見直しを進めている。最大のライバルである世界4位の韓国ポスコが韓国国内の高炉を2カ所に集約したのに対して、新日鐵住金の高炉は現在8カ所あり、ポスコとの固定費などコストの差は依然として大きい。
アジア地区の鋼材の供給過剰は、今後10年は解消されないといわれている。中国では景気減速で鉄鋼需要が縮小しているにもかかわらず、地方の中小メーカーが生産を拡大。需給ギャップが広がっており、中国国内で売りさばけない分は海外に安値で輸出せざるを得ないことから、鋼材価格の低迷は長引くとみられているのだ。
円安という追い風を味方につけ、順調なスタートを切った新日鐵住金は今年、国内・海外市場でのさらなる飛躍につなげることができるのか。そのカギは、新興国のメーカーの追い上げが続く中、さらなる生産の効率化に加え、自動車向けの質の高い鋼材をいかに安いコストで生産して収益力を高めることができるかである。
果たして新日鐵住金、および鉄鋼大国・日本の復活なるか、その試金石となる今年、鉄鋼業界の動向から目が離せない。
(文=編集部)
【続報】
●新日鐵住金は社長交代
新日鐵住金は4月1日付で進藤孝生副社長が社長に昇格する。友野宏社長兼最高執行責任者(COO)は代表権を持つ副会長に退き、宗岡正二会長兼最高経営責任者(CEO)は留任する。
合併に伴い導入したCEO、COOの役職は廃止し、進藤新社長が経営責任を担うワントップ体制になる。宗岡と友野の両氏は、財界活動などに軸足を移す。
旧新日鐵出身の進藤氏は一橋大学経済学部卒業後に同社へ入社後、ハーバード大経営大学院を修了している。総務や経営企画部門が長い。01年から住金、神戸製鋼所との3社連携の実務を仕切ったほか、住金との合併後、旧2社の製鉄間の組織統合などを手掛けてきた。宗岡氏も旧新日鐵出身であり、会長、社長の「たすき掛け」人事に終止符を打ち、旧新日鐵のカラーが強まることになる。