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JR西日本、ITで車両保守メンテナンス手法を変革…90日以内に1回→毎日検査へ

2025.06.03 2025.06.02 16:59 企業
JR西日本、ITで車両保守メンテナンス手法を変革…90日以内に1回→毎日検査への画像1
JR西日本の公式サイトより

●この記事のポイント
・JR西日本は、人の手を介さずに車両状態を把握・判定できる「MiyoCca(見よっか)」を導入
・車両状態を常時監視・把握して必要な時にメンテナンスするモニタリング保全というCBMを導入
・これまで90日以内に1回行っていた検査を、毎日検査することができ、人の手を介さず高頻度な検査が実現

 AIやDXの普及もあり、鉄道車両の保守メンテナンス手法が大きく様変わりしつつある。JR西日本は、人の手を介さずに車両状態を把握・判定できる4つのシステム「モニタ状態監視システム」「状態判定システム」「車両状態監視装置(地上)」「屋根上画像診断システム」からなる「MiyoCca(見よっか)」を導入。保守メンテナンスでは従来主流だった一定周期で実施する時間基準保全(TBM)に加え、車両状態を常時監視・把握して必要な時にメンテナンスするモニタリング保全というCBMを導入し、「データによる検査置換」「車両不具合の予兆把握」「故障発生時の即時対応」に取り組む。これにより、安全性・生産性の向上を目指すというが、具体的にどのような取り組みを進めているのか。JR西日本に取材した。

●目次

「モニタリング保全」とは

 JR西日本の車両では運転台制御や空気圧力、室内温度など多様な情報データが機器間で伝送・記録されており、記録されたデータを地上システムに伝送、蓄積しビックデータとして活用している。地上設備による遠隔監視やデータ活用も実施しており、これらを総称してモニタリング保全としている。

 JR西日本が取り入れたCBMの仕組みとは、具体的にどのような仕組みなんか。また、どのような技術を活用しているのか。JR西日本は次のように説明する。

「『モニタリング保全』とは車両状態を常時監視して必要な時に行うメンテナンスのことです。MiyoCcaのシステムを使用することで、『データによる検査置き換え』『車両不具合の予兆把握』『故障発生時の即時対応』の実現を目指しています。なお、MiyoCcaは、モニタ状態監視システム・状態判定システム・車両状態監視装置(地上)の3つと現在開発中の屋根上画像診断システムの4つで構成されています。

・モニタ状態管理システム
車両・機器のデータを取得、蓄積し一括で管理できるシステム。車両の運転台のモニタ画面がリアルタイムで閲覧可能。

・状態判定システム
車両・機器の機能、状態を蓄積されたデータをもとに自動で判定を行うクラウド上のアプリ。データによる検査の置換を実現するために開発したもの

・車両状態監視装置(地上)
パンタグラフなどの車両屋根上機器および車輪状態を自動で測定、記録する装置

・屋根上画像診断システム
画像認識技術により、屋根上機器の状態を自動で判定するシステムの構築を検討」

人の手を介さず高頻度な検査が実現

 従来の鉄道車両メンテナンスの方法とは、どのような点が異なるのか。

「主に『データによる検査置き換え』を指しますが、車両に搭載されているモニタ状態監視システムを使用して得られる車両の様々なデータを活用し、クラウド上に構築した『状態判定システム』というアプリで車両の機能を自動判定することで、検査を置き換えることができます。これにより、これまで90日以内に1回行っていた検査を、毎日検査することができ、人の手を介さず高頻度な検査が実現できます」(JR西日本)

 同社がモニタリング保全を導入するに至った背景・理由は何か。

「『データによる検査置き換え』『車両不具合の予兆把握』『故障発生時の即時対応』を実現することにより、これまで以上に高頻度かつ高品質な車両メンテナンスを実施し、鉄道の安全性・生産性を向上していくためです」

 モニタリング保全の導入により、どのような効果が生じているのか。

「これまで90日以内に1回行っていた検査を、毎日検査することができ、人の手を介さず高頻度な検査が実現することで鉄道車両の品質が向上すると共に、一部の検査において、人の手を介さなくなることで検査における安全性の向上、生産性の向上も期待できます」

 最後に、モニタリング保全の今後のさらなる改善・アップデートなどの計画について聞いた。

「『データによる検査置き換え』が可能な車両数は、現時点で約300両です。弊社が所有する在来線の約1割にあたります。今後も対象車両を拡大し、2027年度末までに在来線の約6割を予定しています」

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)