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通話アプリの常識を覆す『POPOPO』…GACKTら著名人経営陣が描く戦略とは

2026.04.07 06:00 2026.04.06 22:20 企業
文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=田辺凌馬/ITジャーナリスト
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「POPOPO」公式サイトより

●この記事のポイント
多くの著名人が取締役として参画する通話アプリ『POPOPO』は、音声会話に映画的カット演出を加え「日常会話のコンテンツ化」を狙う新サービスだ。低コスト構造とコアコミュニティ志向により、従来SNSとは異なる成長戦略を採用。初期の「過疎」評価の裏で、ポストAI時代のコミュニケーション再設計を試みている。

 2026年3月、次世代通話アプリ『POPOPO』が登場し、ネット上で大きな注目を集めた。1億円規模とされるプロモーションや、アバターを用いた自動カット演出といった特徴的な機能により話題化した一方、SNSでは「過疎」「使い方が分からない」といった否定的な声も目立つ。

 こうした評価は、2021年に急速に拡大した音声SNS「Clubhouse」の失速を想起させるものでもある。しかし、POPOPOを単なる“音声SNSの延長線”として捉えるのは適切ではない。むしろ本質は、従来のコミュニケーションツールとは異なる設計思想にある。

 特に注目すべきは、GACKT、庵野秀明、ひろゆき(西村博之)、川上量生といった著名人が取締役として名を連ねている点だ。広告塔ではなく経営レベルで関与している構造は、このプロジェクトが単なる話題づくりではなく、一定の戦略意図に基づいて設計されていることを示唆する。

●目次

「通話アプリ」を超えた設計思想…会話を“演出する”という発想

 POPOPOの特徴は、「会話そのものをコンテンツ化する」という点にある。従来のSNSや通話アプリが「情報伝達」や「意思疎通」を目的としているのに対し、POPOPOは会話体験を“演出対象”として扱う。

 アバター同士の会話に対し、あらかじめ用意されたカメラワークやカット割りが自動で適用されることで、ユーザーの雑談があたかも映像作品の一部のように構成される。この仕組みは、単なるUI/UXの工夫にとどまらず、「日常の会話をコンテンツへ変換する装置」と位置づけられる。

 デジタルコンテンツに詳しいITジャーナリストの田辺凌馬氏は、次のように指摘する。

「従来のSNSは“投稿内容”がコンテンツでしたが、POPOPOは“会話のプロセスそのもの”をコンテンツに変換しようとしています。これはYouTubeやTikTokの延長ではなく、むしろゲームやライブ配信に近い構造です」

 この視点に立てば、「何をすればいいかわからない」という初期ユーザーの違和感は、既存サービスとの連続性が低いことに起因する自然な反応といえる。

著名人参画の意味…コンテンツ設計としての“取締役会”

 POPOPOのもう一つの特徴は、参画する著名人の役割が明確に分化している点にある。これは単なる話題づくりではなく、コンテンツ設計そのものを担う布陣と見るべきだ。

 まず、庵野秀明氏の関与は、演出設計の中核を担うものと考えられる。映像表現におけるカット割りや間の取り方といったノウハウが、アルゴリズムとして実装されている可能性がある。

 一方、ひろゆき氏や川上量生氏は、ネットコミュニティの形成と拡張に関する知見を持つ。特にニコニコ動画に代表される「参加型コンテンツ文化」の設計経験は、POPOPOのような新規サービスにおいて重要な示唆を与える。

 さらにGACKT氏は、キャラクター性と演出を融合させたブランディングに長けており、アバターを介した自己表現やファンコミュニティ形成において象徴的な役割を担うと考えられる。

 田辺氏はこう分析する。

「この布陣は“マーケティングのための著名人起用”ではなく、“コンテンツを設計するための人材配置”です。特定のユーザー層に深く刺さるサービスを意図的に作ろうとしている点で、従来のSNSとは戦略が異なります」

低コスト構造が示す持続可能性…“小さく成立する”ビジネスモデル

 表面的にはリッチな映像体験を提供するPOPOPOだが、その実態は音声データとアバター制御情報のやり取りが中心であり、動画ストリーミングと比較してサーバー負荷は相対的に低い。

 この構造は、少数のコアユーザーでもサービスを維持可能とする「低コスト・高付加価値モデル」を成立させる。すなわち、初期段階で大規模なユーザー獲得に失敗したとしても、即座に事業が破綻するリスクは限定的と考えられる。

「近年のSNSは“規模の経済”に依存しすぎている側面がありますが、POPOPOはむしろ“密度の経済”を志向しているように見えます。小さなコミュニティでも熱量が高ければ成立する設計です」(同)

 これは、Clubhouseが急速な拡大後にユーザー維持に苦戦した構造とは対照的である。

「過疎」評価の本質…プロダクトと市場のミスマッチか

 現時点での「過疎」評価は、プロダクトと市場の適合性(PMF)が確立されていない段階にあることを示している可能性が高い。

 特に、顔出しを前提とするビデオコミュニケーションに疲労感を抱くユーザー層や、音声中心だが表現力を求める層に対して、POPOPOがどの程度フィットするかは今後の検証課題となる。

 一方で、TikTokが「短尺動画」という新しいフォーマットを定着させたように、ユーザー行動そのものを変えるプロダクトは、初期段階で理解されにくい傾向がある。

 田辺氏は次のように補足する。

「重要なのは“現時点で流行っているか”ではなく、“特定のユーザーにとって代替不可能な体験になっているか”です。その状態に到達すれば、後からユーザーは拡大します」

ポストAI時代のコミュニケーション戦略…「人間らしさ」の再定義

 生成AIの進展により、テキストや画像、動画の生成が高度化する中、人間のコミュニケーションの価値は再定義されつつある。

 その中でPOPOPOが提示しているのは、「声の抑揚」や「間」といった非言語的要素を拡張し、演出によって価値化する試みとも解釈できる。

 これは、AIが効率性を極限まで高める一方で、人間側が「非効率だが豊かな体験」に価値を見出す方向性とも一致する。

「デジタル化が進むほど、人間は“意味”よりも“体験”を求めるようになります。POPOPOはその流れの中で、会話を体験として再設計しようとしているといえるでしょう」(同)

短期評価では測れない“実験性”

 POPOPOに対する「失敗」という評価は、短期的なユーザー数や話題性に基づくものであり、必ずしもプロダクトの本質を反映しているとは限らない。

 むしろ、このサービスは「コミュニケーションの形式そのものを再設計する」という実験的側面を持つ。成功の鍵は、大規模普及ではなく、特定の文脈において不可欠なツールとなるかどうかにある。

 スマートフォンやSNSが登場した当初も、その価値は直ちに理解されたわけではなかった。POPOPOもまた、同様に評価が定まるまでに時間を要する可能性がある。

 重要なのは、既存の枠組みで「使いにくい」と切り捨てるのではなく、その設計思想がどのような未来のコミュニケーション像を示しているのかを読み解くことだろう。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=田辺凌馬/ITジャーナリスト)

公開:2026.04.07 06:00