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無味無臭で15種類の栄養を補給…フードテック企業が挑む「栄養インフラ」構想

2026.08.05 06:00 2026.08.04 15:51 企業
取材・文=福永太郎

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●この記事のポイント
フードテック企業ニュートリベースは、インキュベイトファンドを引受先とする5000万円の資金調達を実施し、無味無臭の栄養パウダー「Ayo」の事業拡大を加速する。1食約1グラムで15種類の栄養素を補える独自技術を強みに、「調栄料」という新カテゴリーを提唱。アカチャンホンポ全店やイオン約300店舗への導入を足掛かりに、学校給食や海外市場への展開、臨床研究によるエビデンス構築を進め、栄養インフラの実現を目指す。

「栄養を加える」という発想を新たなインフラへ――。
フードテック企業のニュートリベースは、インキュベイトファンドを引受先とする5000万円の資金調達を実施し、7月28日に事業戦略を発表した。

 同社が開発・提供する無味無臭の栄養パウダー「Ayo(アヨ)」は、子どもの健康をサポートすることを主な目的としたプロダクトだ。日常の食事や飲み物にひとさじ加えるだけで、味を変えずに不足しがちな栄養を補い、毎日のメニューのバランスを整えることを目指している。

 現在、Ayoはアカチャンホンポの全国全店舗、イオンで約300店舗に導入されており、子育て世帯を中心に販路を拡大している。今回の記者発表会では、Ayoの事業コンセプトや今後の構想、資金調達の背景について、経営陣が詳しく説明した。

●目次

現代の栄養課題に応える新コンセプト「調栄料」とは

 当日は株式会社ニュートリベース代表取締役CEOの佐藤英明氏から、Ayo誕生の背景や狙いが語られた。Ayoの開発にあたって、同社が最初に立ち返ったのは「食事の目的」だったという。

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株式会社ニュートリベース代表取締役CEOの佐藤英明氏

 食事の目的には「栄養を摂ること」と「おいしく食べること」の2つの役割がある。しかし、社会には味をおいしくするために調味料を加える発想はあっても、「栄養を加える」という発想がほとんどなかったと佐藤氏は指摘する。野菜をたくさん食べるよう促したり、バランスの良いメニューを用意したりと、個人の努力に依存した栄養対策が中心だったのだ。

 こうした状況のなか、現代社会では厚生労働省の国民健康・栄養調査などでも、年代によって栄養摂取の偏りが指摘されている。子どもの偏食や少食、高齢者の食の細り、ビーガンやベジタリアンなど、必要な栄養を十分に摂りにくい人が増えている。特に子どもは、共働き家庭の時間不足から食事に十分なケアが行き届かないことに加え、感覚過敏などで野菜や魚、豆類を避けるケースも多く、栄養が重要な時期に十分な栄養を摂れないジレンマが生じている。

 こうした問題意識から、料理や飲み物に混ぜられる無味無臭の栄養パウダー「Ayo」が生まれた。Ayoは同社によれば1食あたり約1グラムで、不足しがちな15種類の栄養素を補える設計だ。好きな食べ物に混ぜて使えるため継続しやすい。

 Ayoを支えるのは、栄養素材特有の匂いや苦味を抑える無味無臭化技術だという。トウモロコシ由来の食物繊維を活用し、味や匂いの原因となる分子を包み込むことで違和感を抑える仕組みを採用しており、日本と海外で特許出願も進めている。

栄養インフラとしてのAyo構想

 今後は、「調味料」ならぬ「調栄料」という新しい概念を社会に実装していく構想だ。対象は全人類であり、何百兆円規模のポテンシャルを持つ市場を、知財で守りながらトップランナーとして開拓していきたい考えだ。

 理想の未来は、食卓に塩・こしょう・しょうゆといった調味料と並んで「調栄料」が置かれている世界である。家庭だけでなく、飲食店や給食の現場にも自然に導入され、親子で料理をしながら当たり前に栄養を足していく。そうした新しい概念を、社会全体の栄養インフラとして実装していくことを描いている。

 訴求の中心は現在子どもだが、大人や高齢者も視野に入れている。まず子どもを中心に展開しているのは、大人には錠剤サプリという選択肢があり、栄養ニーズをある程度満たせている一方、「新たに粉をかける」という行動変容を直ちに求めるのはハードルが高いと見ているからだ。

 子どもの栄養は悩みが深く、錠剤を飲むことも難しい領域である。そこで「子どもの偏食・少食対策」という具体的な課題に入り込むことで、親が「食べ物に栄養を足す」という世界観に自然に触れる。その体験を起点に、親世代や高齢者など、より広い層へ展開していく導線まで見据えた戦略だ。

 今後の販路面では、学校給食や保育施設など「国の栄養インフラ」への組み込みに加え、海外市場や食品メーカーとの共同商品開発といった方向性を見据えている。ただし、公的な場での採用にはエビデンスが前提となるため、臨床研究などで効果を科学的に示したうえで、自治体を巻き込んだ展開を進める方針だ。

新習慣を世界へ広げる

「栄養を足す」という新しい習慣を世界に広げていくために、同社は今回の資金調達に踏み切った。ニュートリベースは2023年4月に合同会社として創業し、2025年までに売上を36倍へと伸ばした。2026年4月には株式会社化している。プロダクト・マーケット・フィットの手応えが得られたことから、事業拡大を加速させるフェーズへ移行した。外部資本を取り入れて非連続な成長を狙う方針を決め、パートナーとしてインキュベイトファンドを選んだ。

 記者発表会の後半のトークセッションでは、ニュートリベースの佐藤氏と、インキュベイトファンド株式会社 代表パートナーの赤浦徹氏が登壇し、出資の背景や今後の展望について語った。

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インキュベイトファンド株式会社 代表パートナーの赤浦徹氏

 赤浦氏は、世界人口が今後85億人規模に向かうなか、食料需給の逼迫が懸念される状況に触れ、「食べるものに栄養を足すという習慣が広がれば、カロリーが不足する局面でも栄養バランスを整え、健康寿命を伸ばすことにも貢献し得る」と評価する。振りかけるだけで栄養を補えるというシンプルな行為が、新しい生活習慣として根づくことのインパクトに期待を寄せた。

 赤浦氏はまた、Ayoのようなプロダクトを新しい習慣として広げていくには、「誰に、どのように届けるのか」というマーケティング戦略が重要だと指摘する。マスメディア、SNS、インフルエンサー、ポップアップイベントなど多様な手段を組み合わせながら、最適なアプローチを模索していく必要があるとし、「世界の食糧危機を救うかもしれない取り組みを、新しい習慣として広げるチャレンジを一緒に進めていきたい」と締めくくった。

 佐藤氏は、調達した資金はAyoブランドの認知拡大やマーケティング、人材採用に加え、臨床研究などのエビデンス構築にも重点的に充てる計画だ。インキュベイトファンドとの強固なパートナーシップのもとで事業を加速させていきたいと述べ、新しい栄養インフラというビジョンを世界規模で実現していく決意を示した。「調栄料」という新カテゴリーが生活者にどこまで浸透し、新たな食品市場として定着するのか。今後は販売拡大だけでなく、臨床研究などを通じた科学的な裏付けの蓄積も注目される。

(取材・文=福永太郎)

福永太郎

福永太郎/フリーランス編集者・ライター

ライフスタイル系メディアの家電記事の担当を経て独立。現在は複数のWebメディアに寄稿。
福永太郎プロフィール

X:@fukunaga_taro

公開:2026.08.05 06:00