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マルハニチロ、農薬混入事件で迎える、新たな船出への試練~「第2の雪印」との懸念も

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 2000年に発生した雪印乳業の集団食中毒事件では、1兆円以上の売り上げをあげていた巨大企業、雪印グループは解体された。現在は雪印メグミルクの商号でバター、マーガリン、チーズや牛乳を手掛けるだけになった。

 08年、日本たばこ産業(JT)の子会社、JTフーズが輸入した中国製冷凍ギョーザから毒が検出された事件を契機に、JTは冷凍食品事業を縮小した。計画していたJTフーズ、加ト吉、日清食品の冷凍食品事業部門の経営統合は白紙撤回され、JTフーズは加ト吉(現・テーブルマーク)の子会社になった。こうしてJTフーズの名前は消えた。

●懸念される冷凍食品全般への影響

 今回の農薬混入事件を受け、アクリフーズの製品が再びスーパーなどの店頭に並ぶことは難しいとみられている。最も懸念されているのは、消費者の買い控えがマルハニチロHDの冷凍食品全般に波及することだ。

 同社の13年3月期の冷凍食品事業の売り上げは1482億円、部門別営業利益は44億円。これは全売り上げの23%、セグメント営業利益(費用控除前の営業利益)の29%を占め、同社の11ある事業部門の中で冷凍食品が最大の稼ぎ頭だ。年商4800億円規模の水産関連事業の営業利益をも上回る。

 大黒柱ともいえる冷凍食品事業の売り上げが激減し、営業が赤字に転落すれば、新生マルハニチロの屋台骨を揺るがしかねない事態に陥る。

 マルハニチロHDはマルハニチロ水産(旧マルハ=大洋漁業)やマルハニチロ食品(旧ニチロ=日魯漁業)などを傘下に持つ日本最大の水産会社だ。4月1日付で、すべての事業を1本化して新マルハニチロが発足する。

 主導権を握っているのは旧マルハ勢だ。久代敏男社長もマルハ出身。冷凍事業部長などを歴任し、統合後は持ち株会社に移り、10年から社長を務めてきた。今年4月に取締役相談役になり、経営の第一線から退く予定だったが、アクリフーズ事件で3月末に引責辞任する。

 後任の伊藤滋マルハニチロ水産社長もマルハ出身。水産第三部長などを歴任し、統合後の08年にマルハニチロ水産社長に就任。10年から持ち株会社の副社長を兼務してきた。

 事件の舞台となったアクリフーズはニチロが買収した会社だ。そのためニチロ側への風当たりは強い。両社は「対等の精神」で統合したが、今回の事件でニチロ側の発言力はさらに弱まる。

 関係者の間では「第2の雪印になりかねない」との懸念が広がる中、新生マルハニチロは厳しい新たな船出を迎える。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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