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「当社では不払いの轍を踏まないようにしている。それは、契約者対応を拡充するのではなく、いかに支払わない枠組みを合法的につくるかでした」
その仕組みのひとつが、顧客情報の保持期間の短縮化だ。今回の東京海上の未払いの件では、データが消失していることがひとつの問題になった。データの保持期間は社内規定で9年であるため、03年時点の未払いだった契約者情報は実は社内に残っていない。そのため、意図的な支払い漏れの疑惑を抱かせることになった。ただ、会見では今後も、今回のような不測の事態に備えて、顧客情報を従来よりも長く保存する予定はないと宣言した。なぜ、ITの進化で情報保持コストが低減できる中、情報を保持しないのか。
前出の損保社員は、その理由を次のように説明する。
「不払い問題の教訓は、データが残っていたら支払う羽目になったということ。自社にデータが残っていなくても、結果的に代理店などの情報と突き合わせて支払った。その苦い経験を繰り返さないために、『個人情報保護』を名目に、いつの頃からか情報をなるべく早く消し込む姿勢が強まっている。本体だけでなく、代理店にまで半ば強制しているので悪質ですよ」
国内の損保事業は自動車保険が保険料全体の約半分を占めるが、利益が出にくい構図。相次ぐ値上げでなんとか黒字を確保しているのが現状だ。人口減少社会に突入した今、収入の上積みは見込みにくく、いかに支払いを抑えるかが焦点になっている。そのために、「法に触れないすれすれのところで動いているとすらいえる」(業界関係者)という。
今回の東京海上の不払い問題は、損保業界の変わらぬ体質を象徴する氷山の一角にすぎないのかもしれない。
(文=黒羽米雄/金融ジャーナリスト)
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