こうした状況を受けてか、最近、プチ高級品を買い求める消費者が増加傾向にあるようだ。
●忘年会・新年会の鍋は高級食材が人気
身近なところでは「開けるだけで本格おつまみが味わえる」と話題になった缶つまプレミアムブーム。2013年の楽天ヒット番付「和食食材」部門第1位に輝くほど世間に浸透したこの商品。普通なら100~200円で買える缶詰を、あえて少し高めの400~500円を支払ってちょっと贅沢をしようという心理は、まさにプチ贅沢志向といっていいだろう。
さらに外食業界を見てみると、忘年会・新年会の季節に「フォアグラ鍋」や「トリュフ鍋」「ウニ鍋」「伊勢海老鍋」「松茸鍋」「高級肉鍋」などのプチ贅沢鍋が人気を呼んでいる。大阪・心斎橋にあるイタリア鍋居酒屋「空々」の店長は、「ちょっと高めの値段設定をしている鍋料理コースをご予約するお客様は、例年の宴会シーズンに比べて確実に多かった」とその人気を語る。
●日用品でもプチ贅沢ブーム
また、プチ贅沢志向は外食業界にとどまらない。イヤホン・ヘッドホン専門店「eイヤホン」(イーイヤホン)広報の松田氏は、「数万円もするイヤホンやヘッドホンの売り上げは、近年伸びている傾向にありますね。その理由としては、やはりスマートフォン(スマホ)普及が大きいでしょう。スマホをポータブルミュージックプレイヤーとして使う人が増えたことによって、外出先で音楽を聴く人の絶対数は増えました。その分、音質にこだわりたいという層も多くなるのは、自然な流れだと思います」と、売り上げ増の要因を分析する。
スマホ自体それなりの値段がするにもかかわらず、さらに周辺機器にお金をかける人が増加するという現象は、財布の紐が固くなりがちだったこれまでのデフレ期にはなかなか起こりにくかったことではないだろうか。
ほかにも、現在、市場にはたくさんのプチ高級品がある。例えば、資生堂から発売されている最高級日中用クリーム「トータル プロテクティブ クリーム」は51gで2万6,250円。また、通常は一膳当たり0.7~1.5円のところ約8円もするきんだいの「吉野杉柾天削割り箸」。絶妙なキータッチを実現したキーボード「Realforce108UG-HiPro」(東プレ)も2万9,190円(参考価格)と高額だ。
このような自分のライフスタイルにあったちょっとお高いアイテムを購入し、リッチな気分に浸る消費者が増えているのは、景気回復への期待がより高まってきていることの証しなのかもしれない。
(文=武松佑季/A4studio)