同機構はユネスコ無形文化遺産に登録済みの「和食」をはじめ、日本の伝統や生活文化、ファッション、アニメ、ゲームなどを手がける中小企業の海外展開を支援するための投資ファンドとして設立され、2013年11月25日から本格的に活動をスタートした。会長には元フジ・メディア・ホールディングス(HD)常務で現サンケイビル社長の飯島一暢氏、社長には元イッセイミヤケ社長で現松屋常務執行役員の太田伸之氏が就任した。2人ともアニメ、ドラマなどのコンテンツやファッションには通じているが、投資については専門外だ。
●ファンド出身者が主導するクールジャパン支援機構
同機構のキーマンは、ファンドの運用を担うCIO(最高投資責任者)に就いた吉崎浩一郎取締役。米投資ファンドのカーライルでアジア企業への投資を手掛け、現在は投資会社、グロース・イニシアティブの代表取締役だ。吉崎氏がカーライル時代に得意とした手法はLBO(レバレッジ・バイアウト)と呼ばれるもので、M&A(買収・合併)の対象となる企業の資産を担保に買い手が外部から資金を調達する手法だ。短期間のうちに投資を回収して売却益を上げる必要がある。
吉崎氏はカーライル在籍当時、日本企業は他のアジア企業に比べて収益性が低いということで投資の候補から外していた。民間の投資ファンドは投資家から集めた資金を運用して短期間のうちに売却益を上げるのが仕事であり、長期にわたり事業を育てることをその任とはしない。その吉崎氏は、同機構では事業を育てるために投資する。
非常勤取締役には元産業再生機構(2003年、主に企業再生促進を目的に設立された政府関与の特殊会社。07年にすでに清算)マネージングディレクターで、再生機構のOBたちが結集した投資会社、経営共創基盤パートナーの取締役マネージングディレクターの村岡隆史氏が就いている。クールジャパン機構は、実質的にファンド出身者らが取り仕切ることになる。
ファンドの資金は375億円。政府出資の300億円のほか、みずほ銀行、三井住友信託銀行、商工組合中央金庫、大和証券グループ本社、ANAホールディングス、エイチ・ツー・オーリテイリング、大日本印刷、高島屋、電通、凸版印刷、博報堂DYグループ、パソナグループ、バンダイナムコホールディングス、三越伊勢丹ホールディングス、LIXILグループの15社が5億円ずつ合計75億円を拠出した。経産省は15年3月末までに出資額を900億円、最終的には1000億円の規模にしたい考え。存続期間は20年程度を想定し、当初は1件当たり100億円以下の投資を行い、年率7~9%のリターンを想定している。
●海外の放送網購入、デパート展開
同機構は、どのような企業に投資するのか。手始めは、アニメ、ドラマ、音楽などのコンテンツを放送するために、米国など海外テレビチャンネルの放送枠を購入。「ジャパン・チャンネル」というかたちでアニメなどを配信する。電通は「チーム・クール・ジャパン」、博報堂は「クール・ジャパン推進室」という名前の専従組織を発足させ、活動を開始した。