H2Oは三越伊勢丹ホールディングス、大丸松坂屋百貨店などを展開するJ.フロントリテイリング、高島屋、セブン&アイホールディングス傘下のそごう・西武に次いで業界第5位だが、イズミヤの買収で一気に3位に浮上する。
大阪では11年以降、JR大阪駅周辺でJR大阪三越伊勢丹の新規出店や大丸梅田店の増床などが相次ぎ「大阪百貨店戦争」といわれた。その中でH2Oの旗艦百貨店・阪急うめだ本店も大幅増床し、14年3月期の売上高は前期比3割増の1880億円となる見通し。東京・新宿の伊勢丹本店に次ぐ規模の売り上げを誇るが、限られたパイを奪い合う大阪戦争は予想以上に激しく、当初の売上目標(2130億円)を2度下方修正した。
成熟した百貨店業ではこれ以上の成長が期待できないことから、H2Oは外食チェーンなど他業種のM&A(合併・買収)を進め、グループ全体の売り上げ底上げを図ってきた。イズミヤを傘下に収めることで百貨店、ショッピングセンター、高級スーパーから、総合スーパー、食品スーパーを擁する関西最大の流通グループに生まれ変わる。
買収されるイズミヤは、イオンとセブン&アイが2強に君臨する流通業界を単独で生き残る戦略を探ってきた。13年10月にはファミリーマートと組んでコンビニと食品スーパーの複合店の実験展開を始めた。だが、13年8月中間期は既存店売り上げが6カ月のうち5カ月で前年割れとなり、単独で生き残るのは難しいと判断して、H2Oの子会社になる道を選んだ。
関西で頭一つ抜けた流通グループが誕生することで、食品スーパー再編の呼び水になるのではないかとの見方も強い。近畿と首都圏に展開する食品スーパー最大手のライフコーポレーション、滋賀県で圧倒的なシェアを持つ平和堂、南近畿でトップのオークワといった大手スーパーを巻き込んだ再編が進むものと予想されている。
H2Oによるイズミヤ買収に対し、株式市場では評価が分かれた。2月3日、H2O株の終値は前週末比9%安。一方、イズミヤ株は6%高と対照的な値動きになった。株式交換比率はイズミヤの普通株1株に対してH2O株を0.63株を割り当てるというもの。イズミヤ株の前週末終値(450円)で計算するとH2O株は1株714円の評価にとどまり、同社株前週末終値(843円)を大きく下回った。この買収はH2Oの株主には不利、イズミヤの株主には有利との見方が広がった。
●背中を押す消費増税や他業種との競合激化
今回の買収は、4月に迫った消費税増税に背中を押された側面がある。アベノミクス効果に沸く小売業界だが、スーパーだけは蚊帳の外。スーパーが低迷する要因は複数ある。稼ぎ頭だった衣料品がユニクロなどの専門店に侵食され、主力の食品もドラッグストアの食品の取り扱いの拡大やコンビニの大量出店に圧迫されて、苦戦が続く。消費増税後は消費者の節約志向が強まるとの予想が広がる中、スーパー業界は生き残りをかけた合併の動きが加速するとみられている。