「Mt.Gox」は13年5月ごろから数回にわたりサーバに大量のデータを送りつけられるなどのサイバー攻撃を受け、今年2月上旬にはビットコインの引き出しができない状態になっていたという。2月24日にはユーザ保有の75万ビットコインと同社保有の10万ビットコインが消失していることが判明し、26日未明に取引中止を表明していた。ちなみに消失分は円換算では114億円相当となるという。
民間調査会社によると総資産約38億円に対して負債総額は65億100万円。債権者数12万7000人(うち日本人は約1000人)は、平成に入ってからの倒産案件としては最多。65億円には、ビットコイン114億円分は含まれていないという。さらに顧客から預かった28億円もなくなっているという。
米国の主要なビットコイン取引所6社は共同声明で「マウンゴックスの信頼が著しく損なわれているが、これはマウントゴックス単体の行為の結果で、ビットコイン全体の価値を示すわけではない」と発表、「Mt.Gox」の問題とビットコインの安全性は別のものであると主張している。
しかしその一方でマウントゴックスだけでなく、米国の大手投資会社フォートレス・インベストメント・グループは、ビットコイン暴落により13年時点で370万ドル(約3億7700万円)の損失が出ていたことを明らかにしている。ビットコインを大量に抱える大手の取引所でも同じような損失が出ていれば、ビットコイン取引自体が大きな問題をはらんでいることになる。
米紙ウォールストリートジャーナルによると、2月25日からは米ニューヨーク連邦検察庁が捜査に乗り出しているという。マウントゴックスの破たんは取引所の運営体制に問題があったのか、ハッカーによる盗難が原因なのか、はたまたビットコインそのものに問題があるのか。不明瞭な点も多く、事態は依然として明らかにはなっていないが、ビットコインは今後、どうなっていくのか。
●高い利便性を武器に普及
ビットコインはインターネット上で生まれた仮想通貨。サトシ・ナカモトのなる人物がこの仕組みを考えたといわれ、この人物が実在の人物か架空の人物かはいまだにわかっていない。通常の通貨は国や中央銀行が発行し責任をもって管理するが、ビットコインには国は関与しない。そのため、マウントゴックス破たんのようなことがあっても利用者はまったく保護されない。しかし、クレジットカードや為替などを使うよりも安い手数料でインターネット取引や為替送金をでき利便性が高いことから、09年頃に普及し始めた。
「最初は専門家やマニアだけが集うようなネット空間の中だけで利用されていたが、決済に算入する事業者も出てきて、ドルや円に交換することもできるようになった。今や利用範囲は広がり、ネット以外の世界でも利用されるようになった」(ネット業界関係者)
●経済危機で資産保全のために利用広がる
このように広く利用されるきっかけとなったのは、ユーロ圏のキプロスの経済危機だ。ギリシャ経済危機のあおりでキプロスも経済危機に陥り、欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)に支援を求めた時、EUは支援の条件として銀行預金への課税を要求した。これに反発した預金者が一斉に預金の引き出しを行い、現金自動預け払い機(ATM)がストップするなどの混乱が起こり、政府は預金を凍結。ネットなどでの海外送金を禁止した。