読売新聞記事に捏造の疑い、取材対象者から抗議受けた記者は「いい宣伝になったでしょ?」
→対象者と同意書を交わしたデータベースのみが共有の対象となるため、無断共有ではない。また「第三者への提供」とあるが、共有される同意書取得済みのデータベースは本システム導入店のみで共有対象となる。担当者によると、取材時にはきちんと「同意書を交わしたもの」と説明をしたにもかかわらず、記事では「無断」とされていたという。
(2)顔データが首都圏などの115 店舗で共有されていることが4 日分かった
→首都圏に当該システム導入店舗は存在しない。
(3)A社が昨年10 月に発売
→提供・販売開始は今年2 月14 日のプレスリリースが正式。当該原稿は畑記者にも送信済み。
(4)理不尽なクレームをつけられたりした場合に「クレーマー」などと分類
→取材では、万引き防止のための顔認証システムとして説明しており、クレーマーを登録する要素は目的と異なる。
(5)登録されたのとは別の店舗を訪れても、サーバーに記録された顔データで照合され、
警報が出る
→すべての登録データを共有するわけではなく、限定したもののみ。
・自店のみで顔認証検知されるデータベース……9 割以上は共有していない
・他店とも共有されるデータベース……必ず同意書を交わしている
(6)提供された顔データが犯歴や購入履歴などと結びついて個人が特定されれば、プライ
バシーの侵害につながりかねない
→共有検知した先では、「共有システムの〇〇〇:データベースを検知致しました」と現示され、顔画像は表示しない。また、サーバのデータベースと照合する対象は顔特徴から抽出される数値のデータベースであるため、誰が見ても紐づけは不可能。
(7)客は知らされず、店が誤って「万引き犯」と登録した場合でも、客が異議を申し立てるなどで取り消す手段がない。つまり「誤認」でも取り消せない
→削除要請を受ければ共有データ・自店内のデータベースから削除可能であり、利用店舗での削除も可能。同意書を交わした上でデータを共有するため、登録者本人の同意がない限り登録対象とならない。よって誤認登録である可能性は低い。共有システムに登録する際には、定められた管理者が保有するパスワードを知る管理者のみ登録が可能。
ちなみにA社は、本システムの販売に当たり、事前に複数の弁護士などに法的に問題ないか確認を取った上でリリースをしているとのことであった。
●記事の内容に対し、法律の専門家から疑問の声も
今回の読売新聞記事の法的解釈については、法律の専門家からも次のように疑問が投げかけられている。
「システム運営者と各店舗の関係は、委託関係(個人情報保護法22条)として処理すれば、個人情報保護法違反にはならない。したがって、『店舗間の顔認証情報共有』を『個人情報保護法に違反するおそれがある』とする読売新聞の記事は、間違いか、そうでなくても、問題の本質ではないことになる」(『顔認証による万引防止システムと法の支配について』<「花水木法律事務所のブログ」より>)
筆者が取材した警察関係者も「顔認証における顔データベースの共有は個人情報保護法には抵触しない」との考えを示した。
とはいえ、法的根拠についてはまだ整備されていない部分もあるため、今後の議論が待たれるところであるが、ここで問題にしたいのは、読売新聞が事実を裏取りせずに、証拠もない情報を公の記事で断言しているという点である。
A社に確認したところ、同社とシステムをすでに導入している店舗に消費者から苦情は来ていないという。
以上見てきた疑問について、本記事執筆者である畑記者に直接確認すべく読売新聞社に問い合わせたところ、「担当者不在」との返答であった。
万引きによる日本国内の小売業における被害総額は年間4500億円以上と試算されている。この金額に対して、小売業の売上高対人件費比率を15%、従業員の平均年収を300万円と仮定した場合、年間2万2575人分の雇用が喪失している計算になるのだ。まさに、犯罪によって、国民の働く機会が失われているといえよう。
そんな中、今回読売新聞が批判しているようなシステムが普及すれば、犯罪が未然に防げるようになるかもしれない。