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ツタヤ、なぜ国内書店最大手に?書店業界で広がるIT活用と、電子書籍との共存策

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 こういった取り組みは、これまでも多くの書店で行われてきたが、それは書店で働く人々が体験的に読み取ったデータの活用だった。TSUTAYAが展開しているビッグデータ活用は、これまで書店員がまかなっていたことを可視化したものといえる。これにより、書店経営や書店の棚づくりに関して、プロとは呼べないような人でも十分に売れる書店をつくることができ、フランチャイズによって店舗数を増やせるようになったのだ。

●従来は、書店員の努力と知恵で支えてきた

 出版社は、売れる見込みのあるなしにかかわらず、まず一定数を発行する。それを取次店の判断によって、本の売れ行き見込みや書店の販売能力に応じて量を調整して配本する。つまり、書店は積極的に仕入れ行動を取らなくとも毎日大量に新刊が届く。

 日本で販売されている書籍や雑誌の大半は再販制度【編註:再販売価格維持、メーカーが価格を指定する制度】が適用されていて、書店は一時的に預かっているだけの委託販売と等しい。一定期間預かって、売れ残ったら返せば仕入れコストはかからない。発売前の時期には各出版社からオススメ本リストのようなものも来るし、販促用の店頭POPも支給される。入ってくる本を入ってくるなりに並べ、オススメされた本を目立つところに置いて、支給されるPOPやポスターを展示すれば、とりあえずの売り場はできる。

 ただし、漫然とそうしていると、なんの特色もない売り場ができてしまう。また客層と合わない状態にもなりがちだ。そこで、書店員の知恵が役立つことになる。

 人気の本や話題の新刊は当然店頭に並べるが、どの本をどれくらい目立たせると自店の客に魅力的に見えるのか、ということを考慮して陳列の仕方を工夫する。少し前に出た本でも、自店の客層に合うと判断すれば、新刊と並べてアピールすることもある。同じテーマの本ばかりを並べて興味を持ってもらえるようにする。手書きの推薦文を掲示する書店も多い。

 POSデータから見えてくる単純な客層分析だけではなく、本という商品を愛する人たちの独自分析が書店の棚をつくってきた。しかしこういったものは個人の努力の集合だ。誰でもができることではないし、毎日大量に届く新刊や送り返す在庫の山と戦いながらやり続けるのは難しいことだろう。結果として、一部の大型店舗を除いて、全体としては減益傾向が続いてきてしまった。

●各書店がIT活用や電子書籍共存を模索

 TSUTAYA以外の書店も、IT活用を始めている。電子書籍との共存策もいくつか出てきた。

 例えば大手取次のデータを活用して、売れる本を見極めて店頭に並べようという動きを見せているのは紀伊國屋書店だ。紀伊國屋書店は店頭で電子書籍端末の販売を行うなど、電子書籍との共存にも早くから取り組んできた。

 また、三省堂書店が電子書籍販売サイトBookLive!と組み、店頭で電子書籍販売を行う「デジ本」のように、各書店チェーンや大手取次がリアル書店と電子書籍を結びつける取り組みを行っている。

 ほかにも、文教堂は雑誌を購入すると電子版も入手できる「空飛ぶ本棚」サービスでお得感を演出し、凸版印刷は雑誌をコンテンツごとにバラ売りするなど、これまでとは違った売り方で紙媒体と電子書籍の棲み分けや、組み合わせによる相乗効果を図っている。

 そんな中、一般社団法人日本出版インフラセンターが政府の支援を受けて「書店における電子書籍販売推進コンソーシアム」を立ち上げた。これには電子書籍端末メーカーや印刷会社、書店などが参加しており、リアル書店で電子書籍を購入するスタイルの実現可能性について検討するのだという。

 各社ばらばらに取り組んでいるものがありながら、改めてコンソーシアムが立ち上がるなど、外からは若干迷走しているようにも見える。しかし、とりあえずリアル書店にとって、ITや電子書籍は相性が悪いものでも戦う相手でもなく、うまくつきあっていくべき相手ととらえていることは確かなようだ。

●客層に合わせたサービスと店の個性

 TSUTAYAの場合は、ビッグデータ活用によって、書店員個人の努力や選別眼に頼らない店づくりを実現した。しかし、それでは「つまらない書店」になってしまうのではないか、という不安を感じる人もいるだろう。

 あまり本を買わない人にとっては、話題の新刊が欲しくなった時に書店に入り、一番目立つ棚に目的の本があれば事は足りる。毎月コミックスを大量に購入するような人も、新刊の棚を端から端まで見ればいいので、特別な趣向をこらした棚づくりなどは求めないだろう。

 しかし中には、特定の本を探すのではなく、自分に合う本との出会いを書店に求めている人もいる。キーワードで検索して欲しいものが一発で見つかるネット書店ではなく、棚を眺めて本を買うというスタイルを好む人は多いようだ。そういった出会いを演出してくれるのが、書店員が構成した書棚だ。

 ではTSUTAYAは、そうした出会いを否定するのか。TSUTAYAというブランド名で展開している多くの店舗では、そういった面もあるかもしれない。

 しかし一方で、カルチュア・コンビニエンス・クラブが運営する漢字表記の「蔦屋書店」は、趣を異にする。落ち着いた内装の店内にテーマごとのエリアを設け、各分野に精通したコンシェルジュが案内するサービスを提供したり、カフェエリアを設けて、コーヒーを飲みながらじっくりと本を選べる店舗もある。

 つまり、新刊や人気の本が手軽に買えればよいという層と、じっくりと本を選びたい層に向けて別の店舗を用意し、棲み分けているかたちだ。

 店舗丸ごとではなく、同一店舗内のコーナーごとでもよいだろうが、今後、こうした棲み分けは必要になってくるだろう。データに踊らされるのではなく、うまく活用して、より魅力的な書店が数多く誕生してくれることを期待したい。
(文=エースラッシュ)

BusinessJournal編集部

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