エントリーとは、企業への採用選考応募や資料請求のために個人情報を登録することだが、登録したユーザーのトップページに、マラソンに見立てた棒グラフが設けられ、「あなたと似た同期」というランナーのエントリー数と競わせるというもので、そこには内定を獲得した先輩のエントリー数も提示され、とにもかくにもエントリーをするように促しているのだ(3月末までの機能で現在は削除)。
ご存じのように、「リクナビ」などの就職サイトは、企業からの広告出稿で成り立っている。広告のKPI(重要業績評価指標)といえばやはりレスポンス、「リクナビ」ではエントリー数である。
つまり、このように露骨にエントリー数を煽っているのは、「内定獲得のため、多くの企業研究を」という建前ではなく、単に広告媒体としての価値をつり上げるための施策ではないか、との見方が広がっているのだ。
実際に、ドワンゴの川上量生会長は月刊誌「WEDGE」(3月24日号)の中で、ドワンゴが採用試験で「受験料徴収」を打ち出した背景として、以下のようなリクナビ批判を展開し、大きな話題となった。
「リクナビは、学生のエントリー数が増えると、企業からの広告費を獲得する交渉が有利になる。だから、盛んに学生にエントリーを勧める」
h3●新たな広告戦略か?
同様の批判は最近始まったことではなく、この数年言われていた。にもかかわらず、あえてマラソンという題材を選び、「誰かと比べなくていい」などと人生を語るCMに、広告業界では、「わざと不快な広告を流して、炎上させるという広告戦略では」という憶測すら流れている。
実際に、リクルートはほかにも同様の“不快広告”を採用している。例えば、「エントリシート(ES)の負担を解消」というキャッチコピーで出した「OpenES」のCMキャラクターに、自意識過剰のウザいキャラで人気の高い「地獄のミサワ」を起用し、就職活動の先輩が、「ハイ、ES筋」などと武勇伝を披露するというものだ。
かつて「フリーター」という言葉を生み出し、アルバイト情報誌「フロムエー」で一時代築いたように、世の中を煽ることで、自身のビジネスに還元するというのがリクルートの真骨頂である。そんなお家芸の「煽り商法」を世間が見抜き始め、いよいよ限界が来たということなのか。あるいは、炎上マーケティングを活用した「不快広告」という新ジャンルへのチャレンジなのか。
そんなふうに考えてしまうことが、すでにリクルートの術中にハマっている証拠なのかもしれない。
(文=藤田京二)