最高益を叩き出した立役者は、インフラシステムグループと高機能材料グループ。前者は前期比43.1%増の363億円、後者は同78.0%増の479億円をそれぞれ前期に積み増しした。インフラシステムグループでは、中国向け昇降機事業と英国向け鉄道車両事業の売り上げ増が営業増益に寄与した。高機能材料グループでは、自動車向け電子部品や電子機器向け機能性材料の売り上げ増が営業増益に寄与した。このほか、7事業グループのうち、国内原発稼働停止の影響をモロに受けた電力システムグループを除く6事業グループで、こぞって営業利益が前期比増になったのも高収益の要因だ。
証券アナリストは「半世紀あまりに及んだテレビ生産からも思い切って撤退するなどして赤字事業がなくなり、利益を安定的に稼げる体質になってきた」と評価する。一方、同日記者会見した中西宏明会長も「最高益を達成できたが、これはいまだ道半ば」と、この程度では満足できないとの意欲をみせ、15年3月期の営業利益は5600億円との見通しを発表、2年連続の過去最高益更新に自信を示した。
だが、株式市場関係者の中には「今年度もそんなに稼げるのか」と不安視する声が少なくない。
●巨額赤字との苦闘
日立の過去18年間の決算を簡単に振り返ってみよう。日立の決算は1990年度以降、低下傾向を示しているが、特に96年度からそれは顕著になっている。同年度の決算では、売上高は前年度比4.9%増になったものの、半導体メモリの価格急落などの影響で営業利益は同10.6%減、最終利益は同37.7%減となった。
97年度は収益がさらに悪化した。売上高は前年度比1.2%減に踏みとどまったものの、営業利益は同29.7%減、最終利益は96.1%減まで落ち込んだ。半導体メモリ価格の下落に加え、エアコン販売の不振、355億円の為替差損発生、816億円に上る半導体製造装置の減損費計上などが響いた。
ついに赤字転落となったのが98年度決算だった。売上高の落ち込みが前年度比5.2%減の拡大に加え、営業損益は341億円の赤字に転落した。転落要因は前年度減益要因とほぼ同じだった。加えて、情報・エレクトロニクス部門と家庭電器及び電力・産業システム部門を中心に約9700人の人員整理、資産売却に伴う評価損などの事業構造改革費を1325億円計上したため、最終損益も3387億円の赤字となった。
97年度の赤字転落に関して、電機業界に詳しい証券アナリストは「90年代の日立は、当時先端商品だったコンピュータや半導体メモリに注力したため、それなりに成長できた。しかし、これらは同社がお家芸としている電力・産業機械事業と比べると、技術革新のスピードが速く、それだけ商品がコモディティ化するのも早かった。これが同社の企業体質を脆弱にした」と指摘する。