PR会社のように、手取り足取り面倒をみるわけではない。それによって、同社が提供するサービスは、1配信・3万円弱からと低価格での利用が可能である。しかしその分、企業側は、自ら伝えたいことを文章にしなければならない。
同社のサービスを利用したある企業の広報担当者は、「PR会社に頼めば、確かに高い宣伝効果が得られます。しかし、そのためのコストも高くかかります。その点、ソーシャルワイヤーのサービスは、高くても月額10万円を超えることはありません。これでメディアからの取材要請が来れば、十分な宣伝効果が望めます。当初は、この安さがちょっと怖かったです。本当にこの価格で効果が得られるのかと半信半疑でした。弊社は、実際にメディアで記事にしてもらいましたが、想像以上の宣伝効果がありました。今後もこのサービスを利用していきたいと考えています」と、満足げだ。
マスコミ側の反応はどうだろうか?
ある週刊誌編集部は、「取材対象が絞れているので、ネタが取りやすくなりました。マスコミは足で稼げという声もありますが、発信したい企業があって、その情報の裏を取るというのもプロの仕事です。良質な情報を大勢の読者に提供できるところがいいですね」と、こちらもベタ褒めだ。
「広報インフラを自任する弊社では、企業広報担当者、マスコミ関係者、どちらにも適度な距離を保ったお付き合いをさせていただいています。そして水道の栓をひねると水が出てくるのと同じように、インフラとして『企業が発信したい情報をマスコミに伝える』という核となるところに重きを置いております」(安本氏)
企業とマスコミの情報をつなぐインフラとして、どちらにも傾倒しない立ち場で両者をつなぐ役割に徹する。
●10年後、企業とマスコミのほとんどが利用してくれればいい
ともすれば同社の事業は、企業側とマスコミの間に立って、情報を差配したり大勢の消費者に大きな影響を与えることもできる。
だが、Pub Match事業の最高責任者である杉本太一郎常務取締役は、「10年後、多くの企業やマスコミに、弊社のサービスを使っていただければありがたいです」と、謙虚な姿勢を示す。
2006年設立の同社だが、いわゆるベンチャー企業特有のイケイケムードとは程遠く、地に足をつけた地道な事業を行おうという雰囲気がみなぎっている。これこそが10年後、20年後、企業が生き残る鍵ではないか。
企業広報とマスコミのあり方や関係性を変える存在となるか。これからが期待される企業だ。
(文=秋山謙一郎/ジャーナリスト)