6月27日に東京・お台場で開かれたフジHD定時株主総会では、出席者から「業績の悪いフジHDでも株価が極端に落ちないのは、お台場カジノ構想への漠然とした期待感ではないか」と質問。会社側は「特区準備室」を「特区事業室」に格上げして力を入れていることを認めた。
フジHDの2014年3月期の最終利益は前期比44.8%減の172億円と、大幅な減益となった。他の在京キー4局が増収増益となる中、1人負けの状態だ。苦戦の要因はフジテレビ。11年まで視聴率トップをたびたび獲得してきたフジテレビが近年、低迷を続けている。低迷打開のために、全社員1500人の3分の2に当たる1000人規模の人事異動を6月末に行った。1959年の開局以来、最大規模の異動である。このまま低迷が続けば、フジHD経営陣の経営責任を問う声が高まるのは必至だ。
そのためフジHDは、お台場カジノの誘致を業績浮上のテコとして活用したいと考えており、日枝氏と親交の深い安倍首相の在任中にカジノ誘致を実現させることが必達目標となっている。
●新組織発足でカジノ法案成立に向け加速
そんな中、政府はIR整備を検討する新組織を立ち上げた。新組織は、重要政策の企画立案や総合調整を行う内閣官房に設置される。国土交通省や財務省、経済産業省、法務省、警察庁から数十人が集められる。7月中にも人事異動が発令される。
安倍首相は5月、シンガポールのIRを視察。さらに6月に策定した成長戦略には、カジノを含むIRを検討すると明記した。自民党、日本維新の会、生活の党が国会に提出し、継続審議になっているIR推進法案は、カジノを指定地域に限って合法化し、国の管理下で民間事業者によるカジノ運営を認めるとしている。法施行後、1年以内にカジノ運営ルールや規制のあり方などを盛り込んだ関連法の整備が必要になる。
IR推進法が成立後、政府は安倍首相を本部長とする推進本部と、有識者らで構成する推進会議を設置する。日本弁護士連合会は5月、IR推進法の廃案を求める意見書を安倍首相と衆参両院議長に提出。マネーロンダリング(資金洗浄)やギャンブル依存症が増加するといった悪影響を懸念する声も強い中、年内中にもIR推進法が成立する公算が大きいとみられている。
(文=編集部)
【続報】
7月26日付日本経済新聞は「カジノ 20年までに3ヵ所」と報じた。内容は次の通り(以下、記事本文抜粋)。
「政府は東京五輪を開催する2020年までに全国3ヵ所前後で、カジノの開設を認める検討に入った。大阪、沖縄などが候補になる見通しだ。外国人の入場料は無料とし、誘客効果の大きいカジノをテコに訪日外国人の増加につなげる。日本人の入場料は数千円程度を徴収する」
「ゴールドマン・サックス証券によると、東京や大阪、沖縄に4つのカジノ施設を作った場合に市場規模は1兆5000億円になる。不動産やゲーム機器会社に加えて、地域のホテルや小売りなど幅広い産業に経済効果は波及する」
「政府関係者によれば、カジノ誘致に関心を示している約20の自治体のうち候補地を3ヵ所前後に絞る方針だ」
同紙の報道を受けて7月28日の東京株式市場でカジノ関連銘柄が一斉に高くなった。硬貨・紙幣処理機で国内シェア5割強のグローリー(東証1部)が年初来の高値を更新したほか、紙幣識別機や貨幣処理機大手の日本金銭機械(東証1部)やオーイズミ(同)、テックファーム(JQ)も値上がりした。オーイズミはメタル計数機の大手で、テックファームは米国子会社を設立してカジノ向けのモバイル電子マネーサービスに乗り出した。
この先、安倍政権がカジノに力を入れるのは確実だ。「地方創生」との絡みもあり、地方経済の起爆剤にカジノ誘致を据える発想もある。地方重視、橋下・大阪市長との関係強化を考えるなら大阪が有力視される。大阪は臨海部の人工島「夢洲」が候補地で、国際観光拠点を目指す沖縄県も当選圏に入ったとされる。
同紙の報道によると「海外からの豪華船が入港する横浜市も4月に検討会を立ち上げ、有力な候補と目されている」「東京は舛添要一都知事がカジノ誘致に消極的な見方を示しており、政府が東京をカジノ整備地に指定する可能性は低い」とのことだが、東京・台場へのカジノ誘致を推進するフジ・メディア・ホールディングスがどう巻き返すかに、永田町の関心が集まる。