無料通話アプリの成長は著しいものがある。スマホ上でインターネットを通じ無料のメールサービスを提供するもので、世界に何億人ものユーザーがいる。チャット(おしゃべり)をしたり、写真、顔文字などあらゆるものをやり取りできる。LINEは無料通話のほか「スタンプ」と呼ばれるイラストを使った簡易メールが人気で、4月時点で全世界に4億人超のユーザーを抱える。年内には5~6億人まで拡大すると見込んでいる。ライバルは米ワッツアップや中国の微信(We Chat)だ。
インターネット大手企業もその人気に目をつけた。バブルに火を付けたのは楽天だった。楽天は2月14日、キプロスに本社を置くアプリの運営会社バイバーを買収することで合意した。バイバーの売り上げは昨年1年間で150万ドル(1億500万円)程度。楽天はこの会社に9億ドル(900億円)を投じるため、一部の株式市場関係者からは「高すぎる」との疑問の声もあがった。
楽天がバイバーの買収で合意した5日後、衝撃的なニュースが飛び込んできた。交流サイト(SNS)大手の米フェイスブックが米ワッツアップを最大190億ドル(約1兆9000億円)で買収することで合意した。ワッツアップの昨年の売り上げは20億円程度といわれているが、それに2兆円弱の値をつけたのだ。
さらに2月24日には、米ブルームバーグが「ソフトバンクがLINEに出資を打診した」と報じた。無料通話アプリは突如、金の成る木に大化けした。
●日米同時上場の真の狙い
LINEは2011年、韓国ネット企業NAVERの子会社として日本に設立された。「日本発、日本独自のサービス」といわれることが多いが韓国資本の企業である。LINEを他社へ売却しても、株式を上場してもNAVERは大きな利益を得ることができる。
LINEが7月31日に発表した2014年第2四半期(4~6月)の連結売上高は212億円、前年同期比17.5%増となった。売上高の主な部分を占めるのがモバイルゲームのアイテム販売とスタンプの販売だ。収益的にはスマホ向けゲームが主力となっており、さまざまなサービスで収益を上げていることを裏付けている。
NAVERはLINEの売却ではなく上場を選択した。日米同時上場を検討しているのは、日本だけでは株価の上昇にそれほど期待が持てないからだ。市場関係者の間では、米国市場への上場で株価を上昇させ、日本市場にこれを波及させるのが日米同時上場の真の狙いとみられている。
(文=編集部)