スカイマークがエアバスと契約を締結したのは2011年2月17日。今年末頃から機体の引き渡しが順次行われることになっていたという。A380は2階建てで525席を擁する超大型機で、エアバスと世界の航空機市場を二分するボーイングも同規模の機体を生産していない。
「購入契約を締結した当時、スカイマークは格安料金で業績を伸ばしてきたが、日本は人口が減少し、経済成長も鈍化している。加えて格安航空会社LCCの参入で、さらに厳しい立場に立たされるのではないかとみられていた。そのような中で海外に活路を見いだすためにA380を購入しようと考えたようだ」(航空業界筋)
当時のスカイマークのニュースリリースによれば、A380のカタログ価格は推定で1機約287.5億円、6機で1725億円になる。「取引はドル建て」(エアバス関係者)のため、支払額は円安ドル高のあおりで、これより2割程度上昇したとみられる。支払いは12年から始まったが、14年3月期には支払負担が経営に重くのしかかり、25億円の営業赤字に転落。15年3月期第1四半期には55億円の赤字となり、違約金の支払い能力さえ疑われる事態となっている。
●独力の経営維持が困難になる懸念も
スカイマークは「現在エアバスと協議を続けている」(同社広報担当者)と説明しているが、エアバス関係者は「支払い遅滞が発生したため数カ月間交渉してきたが、解決策が見つからないので契約を解除した」と語る。
「交渉の末、エアバスはスカイマークに対して大手航空会社の支援を取り付ければ『A380』を引き渡してもいいと条件を出したようだが、スカイマーク側はこれをのめなかった。西久保愼一社長にしてみれば、国内3位の航空会社として独立して経営したいという思いが強く、結局この条件をのめなかったようだ」(前出業界筋)
今後の対応についてスカイマークは「経営ならびに財務基盤の安定化を図るため、エアバスA330型機による輸送力の強化、ならびに不採算路線の休止等の対策を講じております」としているが、エアバスとの契約破棄により資産として計上されている266億円は特別損失に計上されることになり、さらに違約金支払いが発生すれば独力で経営を維持することは困難になる。
スカイマークは航空機などの動産をリース契約により使用しているため、担保になるような資産を保有していない。銀行借り入れがない無借金経営だが、逆に救済してくれるメインバンクもないということになる。13年11月に東証マザーズから東証一部に指定替えし、本来なら大規模な資金調達がしやすくなったはずだが、契約解除報道等の影響により今年ピーク時には465円あった株価が8月には150円近くまで下落。当面、大規模な増資は難しい。